その脅威は、瞬く間に世界を包んだ。

黴が好き、なんて言う人は、おそらくほとんどいないでしょう。とはいえ、黴は時として薬にもなりますし、ブルーチーズなどの食品にだってなる。好きとは言わなくても、どこかでその恩恵を受けている人も少なくはないでしょう。
しかしそれも、適度な量であればの話。常識を遥かに越えた速度で繁殖した場合、どうなってしまうのか。それを事細かに描いたのが本作。

突如信じられない速度で繁殖を始めた黴は瞬く間に世界各地へと広がり、人々の生活を脅かします。
そして黴そのものの脅威もさることながら、厄介なのはそれに反応する人々。誰が黴を広めたかと犯人探しをし、特定したかと思うと歪んだ正義感で攻撃する。また、対策を講じなければならない政府も、あれやこれやと理屈をこねるばかりで何もしない。なんだか、今のご時世と似ています。

もちろん、この話はフィクション。ですが未知の脅威に直面した時、人はどう動くか、どうしなければならないか。それらがリアルに描かれ、非常に読み応えのあるものとなっています。

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