遊郭で生まれた、見目麗しい男の子「悠介」。彼の武器はその賢さ。齢十に満たないとは思えぬほど聡い彼は、その遊郭で二番人気だった母親の死をきっかけに遊郭の外──つまり外界に出ることとなります。
目の前に広がるのは初めて見る世界。しかしどう生きれば良いかわからない。今まで彼の世界は遊郭の中だけだったのだから。
これはそんな悠介が、一人の人間として生きていく成長物語です。
と、あらすじはこんな感じなのですが、とにかくこの物語、吸引力が凄いんです。しかも脳内で映像が鮮やかに再現され、上質な時代劇を見ている気分になれるんですよね。
素晴らしい物語って、頭の中で想像がすぐに出来るんですよ。この物語もまさにそれ。作者様の筆力が高く、するすると読みながら頭の中でその映像が再生されるんですよね。
これはきっと、素晴らしいキャラクタたちがそうさせているんだろうなと思います。出てくる人物にリアリティがあって、そして心があったかい。読み終えると心がほっこりすること間違いなし。
さらにはですね、この物語はシリーズでして、本作は4作目。このクオリティの物語をシリーズで長く読めるなんて、本当に最高としかいいようがない!
私の最推しはシリーズ二作目から登場する「三郎太」です。どんなヤツかって? そりゃあ読めばわかるさ、いや読んでほしい! そしてこのシリーズの楽しさを共有しましょう!
そんなワケで、絶対に後悔はさせません。
読めばわかるさ、迷わず読めよ! そして一緒に、この作品のドラマ化を世に叫びましょう!!
みなさま、お初にお目にかかります。蜜柑と呼ばれております。
此度はわたくし、実の名を佐倉奈津、と申しますの。
この佐倉の家に幼少より兄妹と等しく育ちましたある少年のお話を、未熟ながら三味線の音を伴に吟じとうございます。
かの少年は幼いながらたいそうな苦労と悲しい経験をしたにもかかわらず、
本人は大人も驚くほどに達観し、生活を自らの手で成そうと佐倉の家に参りました。
とても聡く、なんとも素晴らしい芸の才を持つ少年にございます。
絵筆をとればそれはいかなる巨匠といえど舌を巻きましょう。
彼のその才は果たしてどこから来るのか、
その秘密が分かった時にはもう、もう一つの災禍がこちらに手を差し伸ばしてきてしまいました。
しかし折れる心ではありません。絵師、そして芸の道を成す者には、矜持がございます。彼がひたすらに歩を進めていけたのは、この矜持と言わずしてなんでしょうか。
お手にとってみてください。少年が龍にも変わる時を。
そろそろお座敷の時間も終わりのようでございます。
幼き奈津は、熊を簡単に仕留める精悍たる御仁にときめいてしまったものですわ。
そんなことをここにいらっしゃるお客様のお耳に囁いて、そろそろ次のお座敷に参りますね。それではまた、今度は同じお話の続きで、きっとお琴と舞でお迎えしましょう。
作者様、お話は一度幕を引きましたが、わたくしいつまで佐倉奈津に留まるのをお許しいただけますでしょうか? 一度、太夫に戻りましょうか、それともお奈津にとどまりましょうか。
そんな私信を残して、悠さんがまた厄介ごとを持っていらっしゃるのを待っております。
女郎宿で生まれた男の子。
もう始まって一行目でドラマチックなんですね。
物語は物語ならではの「現実とは思えない」活躍譚が好みなので、もう一行目から夢中です。
平凡なエピソードはひとつとしてなく、次が気になる引きが強い。
そんな物語がよく映えるのは、登場人物たちの生い立ちや決意、「生き様」がとりどりだからと感じました。
女装男子、癖のあるお嬢様、熊殺し、有名絵師、小物から大物の悪役に至るまでひとりひとりの魂がある。
彼らがそれぞれの矜持でもって動くから、物語がよりドラマチックになる。
楽しませて頂きました。
ドSが大大大好きなので、総攻めのはずの自分も悠介に惚れ込みました。
嫌だよ悠さん……悋気はよしとくれ。
あたしゃ本命は悠さんだよ。(小指を噛みながら)(黙れ)(なんかすまんw)
女郎宿で生まれ、廓の中で育った少年、悠介。
しかし母の死とともにそこから飛び出し、新しい世界に飛び立つこととなりました。
そして、彼の世界を広げるターニングポイントがもうひとつ。
ふとしたことで出会った、大名主の娘、お奈津。
天と地ほど身分の違う二人ですが、お嬢様と使用人として過ごしながらも、悠介のことをとても慕い、一人の人間として信頼していきます。
そして、ずっと心に秘めていた、やりたいことを打ち明けるのですが……
ここまで書くと二人が恋仲になりそうな雰囲気ですが、そういう関係にはなりません。
ですが恋とは違っていても、同じ志をもつ同士として、見事な相棒感を出しているのです。
ならば、そんな二人が揃って何をするのか。
それこそが、お奈津のやりたいことと重なっていくのですが、それは見てのお楽しみ。
まだ幼い二人には、いったいどんな苦難と冒険が待っているのでしょう。