第6話




 結局その日はリリーに返信が書けずに帰宅。


 いつもはすぐに返信するのに、返事が無くて心配しているかも知れない。

 彼女はいつも数分後には返事を書いてくれる。

 たぶん授業中にもメールをバイブレーションか何かにしてすぐにチェック出来る様にしてあるのだろう。


 私はそのままの格好でベッドにダイブする。


 今日の授業も凄く疲れた。

 無理してレベルの高い大学に入学してしまったツケが、今になって私の学力を圧迫している。

 毎日勉強しても追いつかない。

 もう、本当は学校なんか辞めてアルバイトでもしながらのんびり暮らしたい。


「はぁ……。なんか駄目だな今日は……」


 少し憂鬱の波が押し寄せている。

 こういう日は何も考えずに寝るに限る。

 私は予定してあった今夜の女子会を急遽キャンセルし、ガラケーを机に置き目を閉じる。

 あの子達ならば私がいなくても盛り上がるだろう。

 別の女子会グループでは私がいないとお葬式みたいになるって言ってたけど。


 そしてそのままその日は深い眠りについてしまった――。





「ん……」


 目が覚め時刻を確認する。

 午前4時。

 昨日は帰ってすぐに寝てしまったからこんな時間に目が覚めてしまった。


「今日は講義が休みの日だったっけ……」


 目を擦りながらもベッドから起き、パソコンの電源を点ける。

 基本的にテレビを見ない私は、日々の情勢などは検索サイトから得る事にしている。

 そしてなんと言っても笑顔動画。

 私の唯一の癒しと言っても良い。


「うわ……! 今日もめっちゃ更新されてる……!」


 早速お気に入りのユーザーの更新に歓喜する私。

 もはや私にとってはアイドル以上の存在のユーザー様が犇いているお気に入り画面。

 嗚呼……///

 私、幸せ……///


「よし。今日は勉強しない! 一日中家に篭ってネットサーフィンしてやるんだから……!」


 たまの休日くらい一日家に篭ったってバチは当たりはしない。

 勉強もやったってやったって追いつかないのだ。

 それにたまには息抜きも必要なのだ。

 そう言い聞かせながら私は、まだ日も昇っていない内からネットに明け暮れる。





 どれくらいそうしていただろう。

 いつの間にか数時間が経過している事に気付く私。


「あ、もうこんな時間か……。まだ朝御飯食べて無かったよね……」


 休憩がてら朝食を作る私。

 昨日の夜に食べるつもりだった作り置きの肉じゃがを暖め、冷凍庫に閉まってあるご飯をチンする。


 ご飯を綺麗に食べ終わり、もう一度パソコンを開く私。

 と、SNSにメッセージが来ている事に気付く。


「あ……。梨里ちゃん……」


 彼女の名前を発見し、昨日は返信出来なかった事を思い出す。

 そして画面を開く私。


====================


 アザリー さんへ


 こんにちわぁ!

 今日、友達の新商品のお菓子買いまくったんですよ。私、甘いもの大好きでww

 でも、食べ過ぎちゃうと体重計が恐ろしいこと に……!(汗)

 アザリーさんは、どんなもの好きですか?


====================


 大丈夫。

 昨日、返信出来なかった事についてはそんなに気にはしていないみたいだ。

 私はほっと胸を撫で下ろし彼女に返信する。


====================


 リリーちゃんへ


 そっかぁ。

 リリーちゃんも甘いもの好きなんだね!

 私も好きだよ!

 結構普段からワインとか飲みながらケーキとかもいけちゃう口ですよ!ww


 それと、昨日は携帯の方で返信出来なくてごめん ね!(泣)

 ちょっと事情があってさ……。

 大学で会うのはまずいかも、というか……。


 あ、別にリリーちゃんに会いたくないとかそういうのと違うからね!

 ていうかめっちゃ会いたいよ!

 もう、思いっきり抱きしめたいくらいだよ!

 ふぉーりんらぶですよ!


・・・。


……私……気持ち悪い……orz


====================



「……送信、と」


 最後はちょっとアレだったが、リリーならば冗談だと受け止めてくれるだろう。

 なんせ数ヶ月もメッセージを飛ばし合っているのだ。

 私の性格は承知の上だろうし……。


「……でもあんまりやり過ぎると引かれるよね……。やっぱ『程度』がまだ分かんないよな……」


 ネットを始めて数ヶ月。

 そろそろ慣れないといけない頃なのだろうが、どうにも調子に乗ってしまう癖が抜けない。

 まあリリーとしか交信していないのだから、他者に迷惑を掛ける事も無いとは思うけど。


「よし……! 今日はネット祭りじゃー!」


 そして私の休日は引き篭もりが決定したのでした――。






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