第8話



 正午を過ぎ、インターネットに熱中している所に、再度リリーから返信が届いている事に気付く。


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 アザリー さんへ


 ワインだなんて大人ですね。なんだか憧れちゃう!

 私も早く大人になって、アザリーさんとお酒飲みたいです!

 大学でお会いすることが出来なくなってしまったんですね。残念ですけど、仕方ないですね。

 でも、会うことは出来るんですよね。アザリーさんって、どこら辺にお住まいなんです?

 私も、アザリーさんに会ってギューってしたいですww




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「わ、私と会って……ギュー……?」


 私のふざけたメールにテンションを合わせて返信してくれるリリー。

 やっぱり彼女は凄く優しい子だ。

 最初にネットで出会った時からそうだった。

 優しくて可愛い妹の様な存在。


「妹の様な……」


 ……。

 どうにも『妹』という言葉がしっくり来ない。

 友人……?

 うん、私の大事な友人……。

 ……。


「……あれ? なんだろう、このモヤモヤした感じ……」


 凄く胸が苦しい。

 うーん……?

 休日だからって昼間っから一人でお酒を飲んでしまったせいだろうか。

 駄目人間だな私……。


「……はぁ。リリーちゃんにぎゅってして貰いたいなー…………。…………。今なんと!? え? 何て言った、私!?」


 自分の言葉に自分で突っ込みを入れる。

 え?

 リリーちゃんにぎゅって……うん。

 して貰いたいかも……。


 ……。

 ……あれ?


「……私…………あれ?」


 と、とにかく返信しよう!

 何故か焦った私はすぐさま返信メールを書き込む。


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 リリーちゃんへ


 ごめんね、ホント……。

 でも大学じゃなくて、私行きつけの喫茶店で会おうよ!

 凄く美味しいパスタとデザートを出してくれる店を知ってるんだ〜w


 そういえば住所とか教えて無かったよね。

 私の住まいは○○市○○町○○だよ!

 来週とかどうかな。

 確か連休に入るよね、高校生も。

 私の大学は年中休みみたいなものだから、リリーちゃんの都合に合わせられるよ!

 それで良ければ返信下さい!


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 送信ボタンを押し、少し緊張していた事に気付く私。

 送っちゃった……。

 とうとう私、リリーちゃんと会えるんだ……。

 ……なんでこんなにドキドキするんだろう。

 私やっぱりリリーちゃんの事を――。


 ピリリリリ! ピリリリリ!


 私の思考を携帯電話の着信音が遮る。


 「もう……。誰よ……。げっ、愁人……」


 いやいやながらも電話を取る私。


『よお、暇人。これから俺の友人とカラオケ行くんだけどよ。お前どうせ暇だろう? この俺がお前を誘って――』


 ピッ。


 何食わぬ顔で携帯を切る私。


 ピリリリリ!


「何よ」


『お前……。俺が喋っている最中に切るなんざ、良い度胸――』


 ピッ。


 ・・・。


 ピリリリ!


「だから何よ」


『ごめんなさい人員足りませんお願いしますから参加してください奢りますから』


 早口でそう話す愁人。

 だったら最初からそう言えば良いのに。


「良いわよ。でもその友人って『ちゃんとした友人』なんでしょうね」


『ああ。俺よりはちゃんとした奴等だと思うぞ』


「そう。なら安心ね。カラオケっていつものあそこでしょう? 由紀子と美香も誘うから、先に始めててよ」


『了解。でも奢りはお前だけだからな。俺だって金無いし』


 それだけ言って電話を切る愁人。


「はぁ……。本当は行きたくないけど、昨日の女子会のドタキャンの件もあるし……」


 溜息を吐きながらも由紀子と美香にメールを送る。

 愁人目当ての腐女子代表みたいな私の友人だ。

 これで昨日の件はチャラにしてもらおう。


「大学の人間関係って、ホント面倒臭いわよね……」


 もうホトホト疲れ果てた。

 だからこそリリーとメッセージのやり取りをしている時が余計癒されるのだ。

 早く彼女に会いたい。

 そして、楽しくお食事したりショッピングに行ったりしたい。


「リリーちゃん……」


 いつの間にか彼女の名を呼ぶ私。


 鏡に映ったその顔はまるで――。


 ――恋する乙女のようであった事は、彼女は知る由も無く――。






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