第9話





 家に帰ってから、私はアザリーさんの返信を読んで物凄く浮かれて舞い上がっていた。

 だって、友里さんに会えるんですよ。会えちゃうんですよ。どうしよう、会って何言えばいいのかな。

 着る服とか、もう一回考え直さないと。友里さん年上の人だし、ちょっと背伸びした方が良いのかな。



「そうだ、朱音に相談しよう」



 悔しいけど、朱音はファッションとかそういうのに詳しい。

 私はもう一度、アザリーさんのメッセを読み返した。



 ◆



 リリーちゃんへ


 ごめんね、ホント……。

 でも大学じゃなくて、私行きつけの喫茶店で会おうよ!

 凄く美味しいパスタとデザートを出してくれる店を知ってるんだ〜w


 そういえば住所とか教えて無かったよね。

 私の住まいは○○市○○町○○だよ!

 来週とかどうかな。

 確か連休に入るよね、高校生も。

 私の大学は年中休みみたいなものだから、リリーちゃんの都合に合わせられるよ!

 それで良ければ返信下さい!



 ◆



「……あれ、○○市?」



 ○○市の、○○町……それって、物凄く近くない?

 電車乗れば数十分くらいじゃん。何駅だっけ、あそこだから……うわ、本当に近い。どうしよう!

 もうこれ運命? 私たちが出逢うことは必然だったのかな。なんてね、なんちゃってね! やだ私、いま恥ずかしいこと考えた!

 と、とりあえず早く返信打たないと。



 ◆


 アザリー さんへ


 本当ですか!?


 メッチャ近いですよ。もしかしたら、擦れ違ったことあるんじゃないかってくらい近いです!

 それに、アザリーさんオススメのお店も楽しみです!

 あとで、アザリーさんの携帯にメールしますね!!


 すぐです! 速攻です!!


 ◆



 それをSNSの方で送り、私はメール画面を開いて本文を打ち始める。

 ああ、どうしよう。本当に本当に会えちゃうんだ。友里さんに、本人に!

 緊張してきた。本気で緊張してきた。ああ、メール打つ手が震えてさっきから変換ミスばかり。

 お、落ち着いて。落ち着くのよ梨里。そうだ、紅茶飲もう。紅茶紅茶。


 私はキッチンに行って温かい紅茶を入れた。

 お気に入りのストロベリーティー。こういうフレーバーティーが好きなんだよね。オレンジとかそういうの好き。

 さて、友里さんへ返事しないと。

 私はリビングのソファーに座って、メールを打つ。



『来週なんですけど、14日とかどうですか?

 14日の、午後。お昼くらいに○○駅で待ち合わせとか、大丈夫でしょうか。

 私、今からものすっごく楽しみです! お食事したあと、ショッピングとかしたいです!

 それで、時間があれば映画とかカラオケとか、色んなことしたいです!』



 メールを送信して、私はソファーに倒れ込んだ。

 ドキドキする。会いたくて、会いたくて、顔がニヤニヤする。

 どうしよう、本当に本当にどうしよう。

 こんな気持ち、初めてだよ。顔が真っ赤なんじゃないかってくらい熱いもん。

 朱音の言った通り、かもしれない。

 私、毎日友里さんのこと考えてる。毎日毎日考えて、ドキドキして、会いたいって思ってる。

 もう、これ確実だよね。

 本気で、私……



「友里さんのこと、好きなんだ……」



 恋しちゃいました。


 まだ顔も声も知らない、女の人に。






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