第13話





 今日は2月14日。

 私は鏡の前でジッと自分の格好を睨み付けるように見た。

 変なところはない、と思う。白ってあまり着ないから似合ってるかどうか微妙だな。

 髪、下ろした方がいいかな。あ、この前買ったピン止め付けよ。

 小さな花の飾りがついた可愛いヤツ。


 友里さん。来てくれるよね?

 なんか、今になって不安になってきちゃった。

 別に疑ってないよ? 友里さん、冗談とかで私のこと、からかうような人じゃない。大丈夫だよ。

 ただ、今の私は物凄く逃げ出したいくらい体は震えてる。

 友里さんに会うことは、スゴく楽しみ。

 でも、私のこと気持ちを知ったら、友里さんは私のこと嫌うかもしれない。

 チョコ、迷惑かもしれない。

 昨日の夜、一生懸命作ったんだけど……

 いらないとか思われたりしないよね? 別れた後で捨てられるなんてこと……



「ああもう!! ダメダメ!!」



 私の悪い癖だ。なんでもマイナス思考で考えちゃダメ。

 これから好きな人に会えるんだから、ポジティブにいかないと!


 私はカバンに可愛い包装で包んだチョコを入れて、フードにファーの付いたコートを来て、お気に入りのブーツを履いて外に出た。

 今日は最高に天気がいい。風は冷たいけど、日差しが暖かい。

 うん、大丈夫。きっと大丈夫。今日は良い日になる。

 ドキドキと高鳴る鼓動を抑えながら、私は駅に向かった。約束の場所は、ここから電車で数十分。今は待ち合わせ時間の1時間前。

 うん、余裕で着くね。



 ◆◇◆



 数十分後。私は約束の場所に着いた。待ち合わせ場所は駅前にあるオブジェ。

 友里さんは、まだ来てないみたい。私はスマホで時間を確認した。さすがに30分前は早すぎたかな。メールとかも来てないし、送れるとか来れないとかはないと思う。

 私、待ち合わせ場所間違えてるとかないよね? 大丈夫だよね?

 友里さんのメールを何度も読み直して、間違ってないことを確認する。うん、大丈夫。大丈夫だと思う。

 友里さん、どんな人かな。

 目の前を通り過ぎる人をチラチラ見ながら、友里さんを想像する。

 綺麗な人だと思う。凄くお姉さんっぽい人。

 あの人かな。それとも、今階段から下りてきた人?

 全然違った。みんあ、目の前を通り過ぎていく。



「はぁ……」



 早く来すぎちゃったせいで、なんかそわそわしちゃう。

 普通に10分前くらいで良かったんじゃない?

 なんか私、気にしすぎて気持ち悪い。



「……友里さん」



 小さな声で私は呟き、俯いて足元を見た。

 本当に会えるのかな。会いたいな。会いたいよ。

 会って、言いたいこと沢山あるんだもん。

 チョコだって渡したいんだもん。


 友里さん。


 友里さん、友里さん……!!






「……梨里ちゃん?」



 その声に、私はパっと顔を上げた。

 目の前には、ちょっと不安げな表情を浮かべる女性がある。

 もしかして。てゆうか、この人が?



「友里、さん?」



 恐る恐るそう言うと、その女性はホッとしたように息を吐いて、笑顔を浮かべた。

 やっぱり友里さんだ。本当に会えた。会えたんだ。

 私はさっきまでの不安が一気に消えて、気持ち悪いくらい顔がニヤけてしまった。

 友里さん、想像以上というか想像通りというか。

 うん、友里さんだ。リアル友里さんだ!



「はじめまして、浅見友里です」

「あ、あの。私、立花梨里です! 大好きな友里さんに会えて嬉しいです!!」

「えっ」



 自分でもビックリするくらい大きい声が出ちゃった。

 友里さんもビックリしちゃってる。もしかして、引いちゃったかな?

 いきなり好きとか言っちゃったし。

 でも、それくらい友里さんに会いたかったんだもん。好きなんだもん。嬉しいんだもん。

 顔がニヤニヤしたまま直らないけど、もう気にしない。



「友里さん、行きましょう!」



 私は友里さんの手を引いて、街へと向かった。




 やっぱり私、友里さん大好きです。



 大好きです!!






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