これは、神の黄昏に巻き込まれながらも抗い、互いのたいせつな人を護る物語

 この物語のヒロインは、大学受験を控えた高校三年生。その彼女のクラスには、ひとつだけ、誰のものか思い出されることのない空席がある。
 その空席に疑問を覚えつつも、受験に向けて勉強に勤しんでいた。

 ある秋の夜、塾の帰りに正体不明の声と、見上げた月に呼ばれ、こことは違う世界「日本国」へと転移させられた。
 その時、途方に暮れていたヒロインを救ったのは、中宮と名乗る少女と彼女の女房である照であった。

 その世界で暮らすうち、自分と同じ境遇の者がもうひとりいることがわかる、ふたりは運命のように引き寄せ合う。
 互いの記憶が呼び起こされたところから、それぞれの運命の歯車が動き始めた。

 神の起こす奇跡の傍観者を目指す者や、自分の叶わぬ望みに心酔する者、更に、それらを利用して、過去の権勢を取り戻したい者などが入り乱れる。
 神の玩ぶ宿命に抗い、互いを護るために立ち上がり、一緒に元の世界に帰ろうと約束するふたりはどうなるのか?

 雅な世界で繰り広げられる、壮大で色鮮やかな絵巻物を見ているような、とても素敵な物語である。

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