概要
そして、……少年は魔王となった。
人間とエルフの間に生まれたハーフエルフの少年リューフは、身の引き締まる寒さの残る初春の朝、母ハミルトンに頼まれ、里の外れに湧き水を汲みに行った。それが彼の日常で、その日も何も変わらない穏やかな一日が続くはずだった。それは突然いた。一匹の傷だらけの黒竜。黒竜はかつて魔が蔓延っていた時代に、世界に厄災を齎した忌竜だった。この出会いこそが、彼の運命を決定づけた。心を引き裂き、大切なものを守れず、悲鳴を上げても誰も聞きつけてくれない。苦しみは身を焦がし、あてのない悲しみが生まれ続ける。信じれば裏切られ、愛せば呪い、憎しみは募っていく。これは一つの長い長い悲劇。明日はまだ遠く、夜は明けない。絶望の先にあるのは、楽園かそれとも地獄か。
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