4-1.セリカの胸中(セリカ視点)
★・☆・★(セリカ視点)
ああ……ああ……ああ!
今日も、今日の糖質OFFデザートも喜んでいただけた!
どちらかと言えば、滑らかには程遠い仕上がりにはなったけれど、我が創造主はとても喜んで食べてくださった。
(シャインで作った豆乳ヨーグルトだけれど。臭みを抜けさせるのに、慎重に凍らせたし甘味料のラカントもいい仕事をしてくれたわ! マスターの排泄タイムは相変わらずだけれど、お陰で以前のような腐敗した臭いも少しずつ軽減出来ているし我慢はしなきゃ! しらたきも糖質ゼロ麺もいい具合だし、カルボナーラも気にいってくれるはず。だけどまずは、お掃除!)
上機嫌になった私は、このシャインも入れて三人には少し広い屋敷を毎日掃除している。
私が生まれた初日もだが、マスターは掃除が下手で貯蔵庫以外を、見るも無残な光景にしていたが。
食材の保管はまずまずだったのに、どうも体型を大幅に変えたせいか堕落した生活を送っていたようで。
運動もさることながら、働いて体を動かす行為を敬遠してたらしく。
だから、代わりに私が家事全般をうけおって、マスターには日課の散歩……ウォーキングを行ってもらってる。
今日で約二ヶ月半。
私は掃除をしながら、時々鼻歌。時々スキップしながら調理場をメインに掃除を進めていく!
「……減量は順調過ぎる程うまくは行っているけど、少し速度が早い」
おそらく、マスターの体内の老廃物を出す排泄行為が必要以上のカロリーを消費しているかもしれないからだ。
「急激な減量は精神的にも影響を及ぼす。マスターの舌が飽きてきたからこそ、メニュー変更もしなくては」
脂肪燃焼スープにも飽きてきたのなら、今日作った海藻を出汁にしてスープを作るのがいい。
キノコも少し調整して減らそう。
キノコ嫌い克服ももちろんだが、この世界のキノコはひょっとしたら効能が高過ぎるかもしれないから。
だから、マスターの排泄も週一単位で酷いのかもしれない。
けど、二日に一度出れば苦しくないはずなのに、あれは異常だ。たしかに私のせいかもしれないが、それはつまり。
「マスターに縋ってもらえる日が近いと言うこと! 頑張る……頑張るわ、私!」
なので、キノコも多少は調整しよう!
克服は出来てはいないが、今のところ残されていないのだから、私が……私の手料理を美味しいと言ってくれるのだ。
こんな嬉しいことはない!
ピンポーン
ピンポーン
悦に浸っていたら、玄関からアラームの魔導具が来訪を告げてくれた。
「……まさか」
この屋敷は街から離れているため、定期的に商人による食糧調達を依頼しているのだが。
訪れる人間はわずかに二名。
どちらも出会ったことがあるが、これまた一癖も二癖もある人間でしかなかった。
「…………はい」
けれど、マスターに用件があるのなら仕方がないので助手でもある私が応対しなくちゃいけない。
「きゃ! セリカちゃんヤッホー!」
「……マールドゥさん」
実に陽気な態度のまま、私に抱きついてきた女性はマールドゥ=エファンド。マスターの幼馴染みさんであり、商人の一人だ。
主に、生産ギルド御用達と言われているらしいが、その実は可愛いものと綺麗なものに目がない……いわば変態。
私の見た目はエルフを模しているので、彼女にとっては欲しい人材でしかないのだ。とは言っても、マスターが私を助手として必要だと言ってくださるお陰で彼女の住処には連れて行かれていない。
ひとまずは、彼女の定期便をあてにしないとマスターの減量生活もうまく進まない。
シャインは無から有を生み出すことは出来ない魔導具であるから、他は普通の人間の生活となんら変わりないのだ。我らがマスターと私は。
「今日も肌艶良し。良いもの食べてるんじゃないのぉ? ところでクロームは?」
「……日課の運動をしてます」
「あの堕落した男を奮い立たせているのは、ほかでもないあなたのお陰ね! 半年くらい前の激変のせいであたしも飽き飽きしそうだったけど、あなたが生まれたお陰であいつも変わりそうだわ!」
美しいもの、可愛いものには目がなくとも。我がマスターの美貌の激変については呆れはしていても、また目に出来るのなら協力は惜しまないと出会った当初から言ってくれている。
毎回のハグは嫌だが、食糧を持ってきてもらえてる分仕方ないと思うしかない。
健康的な肌と引き締まった手足に体格。
女性なら、引きつけやすいタイプではあるが、美貌は私の方が勝っている!
いくら幼馴染みさんだろうが、マスターに可愛がってもらうのは私だ!
あなたに可愛がってもらっても嬉しくない!
「ところで、どんくらい痩せたのー?」
「見た目だけだとわかりませんが、普通には」
「普通ねー? あの肉の塊が動いているとこ見に行ってもいーい?」
「まだ時間はあるので、先に食糧の方を」
「ホイホイ。今月はあれねー?」
荷馬車の中に積まれていた大量の食糧。
これがないと、マスターの減量も研究生活もできないからありがたい。
マスターの日々の生活の糧は、主に私が作る減量用の食事だが。
その料理を作るためのお金などは、錬金術師でもあるマスターの生み出すポーションから発生している。
自称と言わず、錬金術師としては天才であるマスターは冒険者達が必要とするありとあらゆるポーションを生み出せるのだ。それを定期的にもう一人来る人間に渡して換金している。
食事以外にも、日々の糧を得るために仕方なくやっているとぶつくさ言うが、実際その腕は本物。
ポーションで減量も可能では……と思いついてはいたが、減量は一過性で済ませてはいけない。
細胞にうまく組み込まさせねばならないので、私が作る食事でお願いしているのだ。
(だってだって、私が用済みにさせられるかもしれないもの!)
シャインのように協力してくれる魔導具がいても、私がマスターに尽くしてる日々を過ごすためには心を鬼にしなくては!
ちょっと……ちょーっと辛辣な態度になっちゃうけど、仕方ないんだもん!
「ほい。これで最後ね? さーて、あのバカはどこにいるのやら」
「……裏庭にいるかもしれないですが」
とりあえず、二人で食糧を貯蔵庫に運び込んだので、マスターを探すことにした。
私に組み込まれている細胞を通じて、位置確認は出来る。
なら何故、初日に彼の好き嫌いを把握していなかったのか?
(キノコは食物繊維も多くて、身体の老廃物を除去するには最適な食べ物。これを機に克服しないと、体型変化は求められないわ!)
マスターにねこっ可愛いがられたいのは本望でも、そこはそこ。生みの親に対してでも、細胞が教えてくれた元の美しい体型に戻すのに心を鬼神にせねばならない。つまり、無理矢理食べさせた初日には嘘をついたのだ。
だから、ウォーキングも日課に組み込んだのだが、果たして今日は倒れていないのか。
マールドゥさんと裏庭にこっそり行ってみると、苦しそうな表情でウォーキングを一応こなしているマスターがいた。
「へー。相変わらずだけど、あれでも一応動けてはいるんだ?」
「重さ的には、七歳の子供一人分は減りました」
「マジ? けど、まだまだあれって、あいつ大丈夫かしら?」
「年単位で痩せさせないと。急激に痩せたら身体が壊れるんです」
「ほーほー。まあ、お姉さんも気長に待つか? とりあえず、街にはいつでも遊びにおいでよん?」
「仕事があるので」
「んもう、つれないー」
「マスターが見苦しくなくなれば、考えます」
「そうね〜? 頼んだわよ! おーい、クローム!」
「ぬ? マールか?」
マールドゥさんが呼びかけると、マスターは歩行はそのままにこっちにやってきた。
汗だくだが、少しすっきりした表情。やはり、定期的な運動は第一かもしれない。
「まだ全然だけど、痩せているんだって〜?」
「む。セリカのお陰ではあるが、着実に痩せてはいるぞ!」
「……もう少し歩いたら、お風呂がいい」
「その通りだとも!」
マスターが私のお陰って言ってくれたくれたくれた!
うっかり、夜のカルボナーラを出そうと思ってしまったが。ここは我慢だ。
とりあえず、マールドゥさんはマスターのブヨブヨした肉を一通り触ってから帰っていき。
マスターは時間通り、ウォーキングをこなしたのでお風呂に行かれたのだった。
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