31-4.義妹との語らい(マールドゥ視点)
★・☆・★(マールドゥ視点)
紳士淑女とか言われてる、貴族や王族って。
思ってた以上に努力されているのね?
あたし……いいえ、私。淑女教養を受けて、まだ一週間程度だけど。もう燃え尽きそうよ。
クロームのお母さんの本家に養女になったとは言え、早くもリタイアしそう。
「頑張ってくださいましな、マールお姉様!」
「!? え、え! 王女殿下!?」
当てがわれた部屋で干物のように溶けていたら、将来の義妹になるミリアム王女殿下がいらっしゃってた!
え、ノックとか聞こえなかったんですけどぉおおおお!?
「ご安心くださいな? きちんとノックはしましたわ。お姉様が溶けていらっしゃって、お気づきにならなかっただけですわ」
「いや、その……本当に申し訳ありません!」
「大丈夫ですわ。わたくしも行儀作法を始めた頃はお姉様と同じでしたもの。お兄様のために頑張ってくださいましな!」
「は、はい……」
王女殿下は逆にチェストに嫁入りするのに、婚約期間中定期的にチェストの家に修行をしているらしい。
私よりも、はるかに楽だと思われがちだが。料理に洗濯、掃除だなんて王族は普通やることがないもの。
けれど。
「……ですが。お兄様の御親友でいらっしゃる、クローム殿のご血縁がアスペリア公爵家だなんて。あの稀代の美姫でいらっしゃった、アルメリア姫様のご子息だったとは! 世間は本当に狭いですわ〜」
本当に。
クロームのお母さんが、元貴族だとは聞いていたけども。まさか、大貴族のお姫様だなんて思えるだろうか?
昔っから、すっごく綺麗だったし。ついこの間、報告した時に養女を提案してくださった時もだけど。本当に、二十歳そこそこの子供一人産んだ親だよね? って思うくらい若々しかった。
は、さて置き。
「王女殿下は、今日の修行は終わられたのですか?」
「お姉様! わたくし達は、将来姉妹になる間柄ではございませんか? わたくしには敬語は不要でしてよ?」
「え、いや。まだ姉妹じゃ」
「お姉様?」
「……じゃあ。ミアって呼んでいい? こう言う場の時だけ」
「もちろんですわ!」
王女様だけ敬語はおかしいかと思うけど、彼女の癖らしいのでそこは省き。
主に、チェストの話題やガイウス様の話にはなったけれど。意外にも、王女様とは言え、普通の女の子だと言うのは理解出来た。
料理修行とかは大変らしいけど、武器とは違う刃物を扱うのは繊細だが楽しいらしい。まーさか、チェストの腕っ節に惚れるとは思わなかったが。
「ガイウス様が、ガイってお忍びの格好できていた時以外は。割りかし、チェストと一緒だったもの。あいつが、ひょろひょろのイメージの割に腕っ節が強いのはおじさん……チェストのお父さんのお陰かしら?」
「衛兵隊の団長でいらっしゃっいますものね! しかも未だ現役で!」
「私も付き合わされたけど、女には無理……! けど、ミアなら大丈夫かもね?」
「ふふ! 一度、ご教授いただく予定ですわ!」
「おお!」
綺麗で可愛いらしく、どこかガイウス様に似た雰囲気の立派な王女様だけど。武道関連を色々極めているらしい、ちょっと変わり者の女の子。
だから、チェストも折れたのかしら?
あいつが、今の仕事をやりがいに感じているのは私も知っている。それで、貴族にはならずに、ミアを降嫁させることになった。
それは、クロームとルーイス王子の事件が終わってから、この街では知れ渡ったビックニュースだ。
問い合わせはもちろん殺到したが、チェストは持ち前のマイペースさでしれっとしているし?
「お姉様も、最近お兄様にあまりお会いになっていないとお聞きしましたが……」
「ルーイス王子がいなくなった穴埋めするのに、大変だもの。電報は毎日やり取りしてるけど」
「……そうですわ! 今から会いにいきましょう!」
「へ?」
まだ行儀作法の授業が山のようにあるけれど! と言っても、ミアの勢いは止まらずに。
私は彼女に引きずられるような形で、王宮に向かうことになってしまった。王族御用達の馬車は荷馬車に比べるまでもなく、快適で乗り心地が良かったです。
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