2-2.脂肪燃焼スープ②(セリカ視点)
★・☆・★(セリカ視点)
私が、【
まだまだだが、我らが創造主であるクローム=アルケイディスは少しずつだが、確実に痩せてきてはいた。
日課に組み込んだ、ウォーキングもだが私が作る糖質制限食事のおかげで、まだ醜い巨体ではあるものの1/10はまず減量に成功が出来たのだ。
シャインで造り出した、異世界の身体の重さを測る魔導具である『体重計』では、初日で目測通り200を越える数値が出たが……今朝測ったら180キロを少し下回ってた。
食生活ももちろんだが、一時間でもウォーキングを組み込んだお陰で体のカロリー……エネルギーが少しずつ消費されたのだろう。
喜ばしいこと、だが。
「うむ! 野菜がこんなにも甘いとはな!」
先にキャベツのサラダを食べていたマスターは、まだまだ咀嚼回数が少ないが食べる順番は守ってくれている。
今食べているスープは野菜だけの脂肪燃焼スープという、減量化には持ってこいのスープだ。
作り方は、
玉ねぎ
セロリ
キャベツ
ピーマン
を、ざく切りにして鍋に入れて、
潰したトマト
コンソメ
を加えて、水をひたひたになるまで注いで火にかけて、煮立ってから好みの固さになるまで煮込んで塩胡椒で味を整えて出来上がりではあるが。
時々だが、シャインで生成したカレーパウダーを加えて味を変えたりしている。マスターには今のところ好評だ。
「む。このスープを飲むとやはり汗を掻くな?」
「マスターの代謝が良くなってきたからだと思う……」
「そうか!」
スープの野菜は柔らかいが、少しばかり糖質が多くとも運動に見合った糖分を口にしなければ体力も落ちてしまう。
それは良くないので、砂糖ではなく、野菜に含まれる甘味を使って血液に栄養素を送るようにしたのだ。
結果、マスターは二ヶ月で20キロも痩せたという成果を見せている。
「このパンも、慣れれば美味いな! 白パンとは違う甘味も感じて面白い!」
「ブランパンの方が、香ばしさも上」
「うむ! カリカリベーコンともよく合う! ん、チーズも入っている?」
「少しだけなら構わない。乳製品の脂肪分は量を加減すれば食べてもいい」
「なるほど……しかしながら、このサンドイッチは美味い!」
「ベーコン、レタス、トマト、チーズ……これらが入っているから頭文字をとってBLTCなの」
「半分以上野菜だが、お前の作るのは美味いな!」
「マスターも自分で作ればそこまで醜くならなかったのに……」
「自分で動くのは嫌だったんだ!」
「はあ……」
全く。
私の身体に組み込まれたマスターの細胞部分に関する美醜は、モデルにしたエルフの総称に負けないぐらい美しかったというのに。
シャインが悪いわけではないが、舌の肥え方が悪い方向にしか製造出来てない未完成の錬成料理を爆食し過ぎた我らが創造主は。
たった三ヶ月でこうも醜い肉の塊になってしまったのだ。
寿命云々は嘘をついていないが……。
私の本当の目標は。
(このマスターを元の身体に戻して、可愛いがってもらいたいぃいいいいいいいいい!!!!!!)
生まれてからこの方、マスターの前では澄ました態度でいる私だが、本性は全然違う。
あの美しいマスターに、可愛いがって可愛いがって可愛いがって可愛いがってほしい性質だと自負している!
早く……早く、と日々想いは募っても、自分で口にした通り、いきなりこのマスターを減量させても身体には身につかない。
だからこそ、少しずつ痩せさせねばいけないのだ。
(ああ……早く、あのお美しいマスターに会いたい!)
性格は唯我独尊かと思われがちだが、悪いことは悪いと認め始めているし、自分の美醜についても反省しているようだ。
ならば、私は自分に組み込まれた異世界のレシピで全力でサポートするのみ!
そして、成し遂げたあかつきには、マスターに猫のように可愛がってもらうのだ!
けど、今のままだと可愛がってもらえないかもしれない。
どうも、顔と感情がうまくついてこなくて表面上無表情だし。
(……私のモデリングにしたエルフって、いったい誰なんだろう?)
マスターは、昔冒険者として多少は活動してた時期にふらっと見た程度とは言ってはいたけれど。
「む。このシャキシャキしたキノコではない野菜は何だ?」
「……ゴボウとニンジンのキンピラ」
「キンピラ?」
「根菜類の野菜炒めみたいなもの。醤油と蜂蜜で味付けしただけ」
「こう言うのは好きだな!」
「ん。じゃあ、他の野菜でも試してみる。昼はしばらくこのブランパンサンドイッチがいいだろうから」
「任せた!」
ああ……ああ!
まだまだ醜いけれど、その笑顔に弱いわ!
ブヨブヨして顎は強調されてても、美しさをわずかに残した顔立ちに、私は顔から火が噴き出しかけた!
けれど、生まれてこの方表情には出ないので、誤魔化すためにも小さく頷いた。
「俺はもう一度風呂に入ってくる! その後に、今日はシャインの改良に取り組むぞ!」
「ん、わかった」
マスターを見送って、皿の後片付けをしてから、私は先にシャインの所に向かった。
【こんにちは、セリカ】
「こんにちは、シャイン」
同じマスターに造られた者? 同士だけど、会話は可能だから、私達は良き仲間だと思っている。
この子の中で生成されてた時から、会話をしてたのも本当。ある意味、この子は私のお母さん……より、お姉さんかしら?
マスターは知らないけど、この子の性別は一応女性なの。
【今日も改善?】
「あなたの生成液が悪いのか、まだ検討しているけれど……。私の口には合わないわ」
【諾。我には口がないから食せない】
「だから、同じ生成物体である私が食べるわ。私の料理を一度分析出来ればいいけれど」
【……可能】
「え?」
【汝らが、我の調整を加えたお陰で可能にはなっている】
「え……」
では、同じ減量用の食事とは言え、シャインが同じかそれ以上のモノを生成出来れば……私は用済み?
いいえ、私は少なくとも、マスターの助手でもあるのだから破棄はされない。
それに、ホムンクルスの破棄は、個体の魔力暴走がない限り禁止されてる行為だから、私は少なくとも何も問題を起こさなければ破棄されない。
だけど、私の作る料理を口にしてもらえなくなるかもしれない。
【……セリカ、協力しよう】
「……シャイン?」
【我の完成は先延ばしにしても構わない。が、精度を上げる研究は協力してほしい。創造主のあの醜さを作ってしまったのは我の所為でもあるから】
「……いいの?」
【異世界用語で言うなら、ギブアンドテイク。持ちつ持たれつだ。汝の願いを知っているゆえに、我も協力しよう】
「……ありがとう」
シャインには悪いけど、ここからは持ちつ持たれつの言葉を借りるなら。
私の目標と、我らが創造主の身体を元に戻すために共同戦線をしこうじゃないか!
「元の身体に戻してから、いくらでも美味しい錬成料理には協力するわ」
【諾。生成食材を作るだけでも、我の進化には繋がっている】
「そう。それならよかったわ」
そうして、その後すぐにマスターがお風呂から戻ってきたので、いつもの態度に戻したけれど。
やっぱり、まだまだ未完成のシャインの錬成料理は薄くて美味しくなかった。
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