3.トイレ事情
★・☆・★
「ふんぬぬぬぬぬぬぬぅうううう!!!!!!!」
「マスター、うるさい」
「だ……黙れ! お前もこの状況になれば理解出来る筈だ!」
「私には排泄機能がない」
「ふんがぁああああああああああああああ!!!!!!」
俺様が、何故……何故!
(トイレに二時間近くもこもっているのだぁあああああ!!!!!!)
あれはそう。
今日の昼食を食べてからだ。
セリカが『糖質OFFピザ』と言う、豆の加工品である『油揚げ』と言うのを使って作ってくれた、これまたキノコたっぷりの美味なるピザを食べた後だった。
突如、俺様の腹が蠢いて……トイレに駆け込むわけになったのだ!
しかも、これが初回ではない!
この二ヶ月、週に一度の頻度で毎回毎回かなりの時間こもって排泄しまくっているのだ!
「ぬぉおおおおおおおおお!!!!!!」
「毎回毎回下品な声響かせ過ぎ」
「お前のせいだろぉおおおおおおおお!!!!」
「けど、マスターの身体のため。耐えて」
「矛盾してないかぁああああああ!!!!」
「今からデザート作るから、出すもの出して」
「うう、わかったぁああああああ!!」
俺様の身体に蓄積された脂肪や贅肉以外の老廃物とやらが……胃と腸の活動が、セリカの減量食事のお陰で、活性化されているせいで。
まだ週に一度のペースではあるが、俺様の身体から絞り出すのに排泄行為が活発化しているのだ。
時間は異常だが、肥え過ぎたこの身体を絞るのにはセリカ曰く仕方がないことらしいが。
そのお陰か、ウォーキング以上に体力を使い過ぎて、毎回少しずつ痩せてる感じがするのだ。
あと、トイレを詰まらせて掃除するはめにはなるが。
この天才錬金術師のクローム=アルケイディスがあああああ。
何故便所掃除をせねばならないのだぁあああああ!
けど、終わらせてから食べれるセリカの糖質OFFデザートが美味いので毎回頑張ってはいるが。
「く……ぅ、痛い痛い痛いぃいいいいいいいいい!!!!!!」
胃と腸の動きが活発になって、消化された食事が排泄物となって俺様の身体から出て行くのだが。
最初は硬くて出てこない時間が長く感じたが。
今はいわゆる下痢の状態になって大量に出てくる。
セリカ曰く、デトックス効果と言う体内に溜まったままの毒素や老廃物を排出する行為が、食事を変えたことで活発的になっているからだろうと。
それ故に、俺様の、以前は二週間に一度の排泄行為が大幅に改善されたという事だ。
嘆かわしいが、まだまだ体型改善行為であるダイエットとやらは続くのだ。
とにかく、100キロまで落とさねば、俺様のこの症状もしばらく続くらしい。
辛い……辛過ぎるぞ!
「うぬぬぬぬぬぅうううううう!!!!!!」
けど、腹が痛いものは痛いし、身体からはまた脂汗のようなモノが衣服に染み付いていく。
実に不快だが、この脂汗の一部も老廃物の一種らしく。
この脂汗の臭いが身体に染みつき過ぎたせいで、最初にセリカを抱きとめた時に不快に思われたようで。
仕方がないが、俺の中の毒素とやらを抜くためには、この行為も運動とみるしかないのだ。
ウォーキングよりもさらに厳しいがな!
「……う、ううう、終わった……」
そして、そこから小一時間くらい掃除の格闘となったが。
終わった頃には、セリカがご褒美のためにデザートを用意してくれている!
「お、終わったぞぉ……セリカ」
「お疲れ様。今日は糖質OFFのアイスクリームを作った」
「おお、アイスか!」
疲れてほてったこの身体にはうってつけだ!
一応風呂にも入ってきたから、どうにも暑くて暑くて。
席につけば、セリカはトレーに載せたアイスクリームの器を俺様の前に置いた。
「これは……?」
異世界レシピでサラッと見たアイスクリームの挿絵よりは断然に色味が薄い氷のようなクリームのような塊。
あと、果物が添えてあって、種類は今の時期穫れるオレンジだった。
「豆乳……豆から作った乳のようなものをヨーグルトにして、それでアイスを作ったの。甘味は、砂糖じゃなくて、シャインで作った糖質OFFの甘味料で。果物は一緒に食べれる量だけ添えた」
「ほほう、ではさっそく」
感謝の祈りをしてから、スプーンを手にしてアイスをすくう。
「ほう、少し固いな?」
「アイスの種類でもあるシャーベットに近いから」
「どれ……」
口に入れると、なんとも言えない爽快感が口いっぱいに広がった!
「美味い!」
「そう」
クリームを使ってはいないので滑らかとは言い難いが。
程よい豆の香りと舌触りが絶妙で。
甘味もきちんとあって、しゃりしゃりしてるが、今のほてった身体を涼しくしてくれる、画期的なデザートだった。
こう言う糖質OFFと謳った食事は、少し物足り無さを感じる時もあるが、不味くはない。むしろ、美味いのだ!
「うむ、途中でこのオレンジを食べるとまた爽快感が」
「りんごやパイナップルより、少しは糖質が低いから大丈夫だと思う」
「であれば、今日はこの後……」
「いちいちシャインで料理を作るよりも、材料を作るところから始めた方がいい」
「またそれか……」
「食べる私の身にもなって。美味しくないのは嫌」
「……はあ、わかった」
いい加減、俺様も押し問答には飽きてきた。
生みの親である俺様の我を貫き通すのも飽き飽きしてきたので、【
実際、シャインから作り出した、糖質OFFの食材のお陰で俺様の体質改善も始まっているしな?
「ん、行こう」
「はいはい」
まだ体力は回復していないが、多少は動けるので重い(物理的に)腰を上げてからシャインのある地下研究室に向かい。
先に何か造っているのか、シャインが稼働していた。
「また何か造っているのか?」
「うん。パスタに代わる麺食材を」
「パスタ!」
俺様の大好物の一つ!
が、セリカが糖質OFFと言っていたから、昼間に出したピザのようなものかもしれないが。
【TEST
TEST
右の培養管に食材名『しらたき』を作成完了
左の培養管に食材名『糖質ゼロ麺』を90%まで作成完了
続けますか?
YES/NO?】
「しらたき? 糖質ゼロめん??」
どちらも異世界の食材だからか、初めて聞くのでさっぱりだ。
「……しらたきはこんにゃくの加工品で見た目は麺のような状態。糖質ゼロ麺はこんにゃくの粉を使って作った柔らかい麺のこと」
「美味いのか?」
「調理次第。だから、今晩のメニューはカルボナーラの予定」
「カルボナーラ?」
まったく知らないメニューを口にされても美味いかどうかわからない。が、セリカの腕前ならどれも俺様の舌をうならせるものばかりだ。期待しないわけがない!
「とりあえず、出来てるモノから取り出そう」
「わかった。……YESだ! 出来上がったしらたきを俺様の手に!」
【諾】
泡のような球体の中に入ったまま、管から出てきたのはかなり細いパスタのような食材。
泡を解除して、手に持つとムニュムニュしたゼリーとも言い難い感触だった。
「変な手触りだな?」
「けど、成功してる。これで作れる」
「大盛りに……」
「ダメ。カロリーは抑えても、今日はチーズを多めに使うから」
「くっ」
まだまだ痩せていない俺様には、大盛りの道は開けていないのか。
排泄と運動だけで、まだ175キロまで痩せていても、見た目は醜いままだ。
仕方がないが、これも寿命を元に戻すため!
「じゃあ次は……」
「なにを作るんだ?」
「海藻」
「は?」
またよくわからぬ素材を口にするが、なんだと言うのだ?
「海の草とも言う」
「海に草だと?」
「加工次第で、糖質を抑えたいい食材になる。海水で出来るかもしれない」
「海から遠いぞ?」
「魔法で生み出す」
「……無駄遣い、ではないが」
いったいどんなモノだ?とセリカの様子を見ていれば。
素材の海水を入れただけで、ものの数分でシャインがよくわからぬウネウネした物体を生み出した!
「それがカイソウ!?」
「このままで食べられなくもないけど、キノコとの相性もいい。スープは抜群に美味しくなる」
「信じられぬが……」
「夕ご飯に用意する。たまには違うスープがいいでしょ?」
「う、うむ。実はだいぶ飽きてきたのだ……」
不味いどころか美味いのだが。
トマトとコンソメの味に少しばかり飽きてきたのだ……。
だが、代わるものがあるのならありがたい!
是非とも頼みたい!
「じゃ、今から散歩してきて」
「まだ運動しろと言うのか!」
「トイレのせいで、出来てなかったから」
「く……」
反抗出来ぬので、仕方なく俺はまた重い腰を上げて地上に出るのだった。
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