声なき知らせに気づくための、大切なこと

家長である達夫は、必死にとはいかないまでも職をさがす日々にあった。
初夏のある日、ふと思い立ち、海沿いをゆるやかに走る電車へ乗り込む。コトコトと揺られしばらくすると、停車した駅に今は亡き妹の姿が……。
在りし日のままの彼女は、黙って達夫の正面に座り、彼もまた妹を無言で迎え、見送った。
呼び起こされる家族の記憶。愛せなくなっていたはずの老齢の父を連れ再び電車に乗ると、ふたりの前に彼女はあらわれて──。

「声なき知らせ」によってつながれる未来に、少しの寂しさとあたたかさが残る物語でした。

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