昼休憩にいつもの公園へ足を運んだ主人公。
そこでぼっち飯を楽しもうとすると、10歳くらいの女の子に見られていることに気が付きます。
なんだか見られながら食べるのは気になる……。そう思った主人公は女の子に話しかけますが、ムシされてしまいます。
少しイラついた主人公ですが大人なので我慢して、もう一度話しかけますが、またムシされます。
そして女の子は微動だにせず、主人公をじっと見つめ続けます——。
ここまでだと、もしかしてホラー?と思うかもしれませんが、そうではありません。女の子がムシしているのには、理由があるんです。
それに気付いてからの主人公の行動に、心が温かくなりました。彼女はサバサバしていますが、冷たい人間ではないのです。
ぼっち飯から始まって、こんなに心が温かくなるとは思いませんでした。コンテストで受賞するのが分かります。
ぜひ読んでみてください!
情報の開示のタイミングやシャレードでわからせるところはやはりすごい。
4000字という字数が「そんなにあったの!?」と驚くくらいにするすると一気に読むことができて、逆に「それだけしかなかったの!?」と驚くくらいに充実した内容でした。
高校を中退して就職した葵さんと公園に現れる謎の少女の出会いから始まる、奇妙で心温まる物語。
赤いきつねと緑のたぬきというコンテストを上手く利用した、粋な終わり方が心地よい読後感を生んでいました。ほんとに素晴らしいです。
(作家目線でなにかお伝えできることが有ればと思ったのですが、正直完成度が高すぎるので、技術的な部分をいちいち言うのも野暮になっちゃいますね。ただ、何も考えずにスッと読めて素晴らしい読後感が広がる作品というのは、ぱっと見でわからない技術がふんだんに使われていることを意味するので、分解して作品研究すると書く技術が上がるのは間違いないと思いました)
高校を中退し、友もない孤独のОL(葵)は、公園でぼっち食をしています。そこで、耳の不自由な少女(小学生)と出会います。彼女は、おそらく学校にも、病院にも行っていないようです。言葉遣いがうまくできません。葵はその薄幸な少女と対等な付き合いを始めます。
この作品は、肩肘たったところがありません。説明分がほとんどなく、状況と会話で深みのある作品に仕立てあげました。赤いきつねと緑の狸を巧みに取り入れています。
十日間ほどの少女との交流を。淡々としたタッチで描いていきます。その少女に葵は自分と同じ境遇をみたのかもしれません。じわじわと人柄が伝わってきます。
読後、暫くの間、余韻を楽しんでいました。
今年読んだ傑作作品の一つです。見事です。