公園での少女との交流を舞台に、見事なひとつの世界を創りあげました

高校を中退し、友もない孤独のОL(葵)は、公園でぼっち食をしています。そこで、耳の不自由な少女(小学生)と出会います。彼女は、おそらく学校にも、病院にも行っていないようです。言葉遣いがうまくできません。葵はその薄幸な少女と対等な付き合いを始めます。
この作品は、肩肘たったところがありません。説明分がほとんどなく、状況と会話で深みのある作品に仕立てあげました。赤いきつねと緑の狸を巧みに取り入れています。

十日間ほどの少女との交流を。淡々としたタッチで描いていきます。その少女に葵は自分と同じ境遇をみたのかもしれません。じわじわと人柄が伝わってきます。
読後、暫くの間、余韻を楽しんでいました。
今年読んだ傑作作品の一つです。見事です。

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