左と右の違いがとっさに判断できない。
主人公の少女・遥香は、左右認識の失調により、幼少のころから自身が他者より劣っていると思っていました。左と右の区別。たったそれだけ、けれど、彼女にとっての「たったそれだけ」は、あらゆるものごとがうまくできない原因となったのです。
父母の敷いたレールにのり、芸能学校に通う遥香。そこで彼女は、まばゆく輝く“彼”と運命的な出会いを果たします。彼に見出された、闇の中にまたたく光。恋する心によって覚醒した彼女がもたらす幸せとは──。
他者にできることが、私にはできない。
けれど、他者にはできない、私にしかできないことがある。
他の誰でもない、自分に誇れるささやかな自信に気づかせてくれるような物語でした。
コンサートホールの舞台上で、グランドピアノをかき鳴らすような
アップダウンと深みに満ちた物語でした。
ピアノ、手、ダンス。右手の目印。
タイトルの「曖昧」の意味。ぜんぶが1つのラインにキレイに乗っていたことが
あとになって分かるのがよかったです。
物語中盤に彼が言う
『河名さん。右手の甲……水性ボールペンはダメだよ。せっかくのホクロが消えかけてる』
から流れが一気に加速。面白い。
個人的には、ここから始まってもミステリぽくて、よかったかな、なんて思いました。
みにくいアヒルの子、の伏線回収も素敵でした。絵になります。