きっと読み返してしまう物語

 話のテンポがとてもよく、1万字あるはずが一気に読めてしまう程でした。無理矢理、納めてしまっているのではなく、スムーズなテンポにする事で、すぱっと読めてしまう作者の得意とする文体の賜であると感じます。

 また態と漢字ではなくひらがなで書かれている言葉の配置が、何となく江戸川乱歩が戦前に出していた作品群を連想させられました。軽いミステリーに少年探偵団や明智小五郎のイメージが重なり、そこに加わるファンタジーのテイストが現代の感覚と合致し、温故知新という言葉が浮かびます。

 短編でありながらも各所に引きがあり、連載の第一話を読んでいるような気になるのも特筆すべき点と思います。

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