その涙さえ命の色　〜めぐりあい〜

現代の日本社会の抱える問題を、柔らかな筆致でジワリと訴える物語です。

苦労に耐えろ。常に自分自身に厳しく、そして決して逃げるな。
日本の文化には、こういう姿勢を美徳とする意識が今なお強い力を持ち続けている気がします。
例えば——心も体も擦り減らし、身を粉にして働く。それこそが立派な大人であり、社会人。
でも、果たしてそれは、真実でしょうか。
一番大切なものは、何か。本当に、仕事や会社に心身を捧げることでしょうか？

この物語は、その問いの答えを、暖かく諭すように教えてくれます。

うっかりすると、日本に根強く残るその「美徳」は、それに従う個人からの視点で捉えれば、「本末転倒」そのものかもし…続きを読む

ブラック企業に勤める主人公が、判断能力を失い心をすり減らし働き続けている。
そんなぎりぎりの精神状態の中、ある人と出会う。
この話には名前がいっさい出てこない。
主人公は名前をもたない「ぼく」
ぼくのような人は、今日本中にあふれているだろう。
ぼくはあの人と出会う事で、人生を好転させていく。
どうか、今も血の涙を流している人たちに、人生の意味を教えてくれる人との出会いが訪れますように。

ブラック企業、滅びてほしいものです。
社会の敵ですな。
デフレですよ、世の中は。
主人公、ブラック企業の会社員、血の涙をながします。
いえ、たとえでした。

ファンタジックな挿話があって
白い野々ちえさんらしくハートウォーミングに締めくくられます。
陳腐な慣用句をつかうゲスどもの話からの落差があります。
わたくしのレビューもひどいものです。

「頑張れ」という言葉が、人に苦痛を与えたり、時には命を奪う状況を招くことだってある。
正常な思考で判断できるうちに、自分に合わない環境を見極め、そこから去ることも一つの問題解決方法。
そういった視点で描かれた作品で、いろいろと考えさせられました。

競争社会で生きているわたしたち、いつも勝ち続けるなんて限りなく不可能です。
限りある人生をより自分らしく生きるため、正論では語れない道を選択肢に入れても良いのではないでしょうか。

逃げるのが悪いなんて、誰が決めた？
と、改めて考えさせてくれるお話です。

生きるのって、確かに辛いですよね。
もう生きるのがしんどいと思ってしまう前に、そこから逃げ出すっていうのはいかがでしょう？
逃げって言うのは、何故かマイナスイメージが付き纏いますが、それって誰が決めたんでしょう？

「逃げ」が悪いと非難してくる人たちには、逃げながらこう言ってやりましょう。

「これは逃げてるんじゃない。人生の勝ちに向かって走ってるんだ！」ってね。

ひとつのタイトルで様々な作者様がオリジナルの作品を紡ぎあげていく自主企画。
一月のタイトルに含まれる命の色をとても静かに描き上げた作品です。

救ったのは誰なのか。救われたのは誰なのか。
不思議なおじさんが言う優しさの話には思わず見入ってしまっておりました。

すぐに読める短編ではありますが、大切に読んで頂きたい物語でした。

同題異話マスターの作者様、早速作成しました。

お見事のお題回収です。

赤ん坊がこれから生まれる人、子供を持ってる人にぜひ読んでいただきたい内容ですね。

メッセージ性ある素敵なお話でした！