水に葬る(おくる)夏休み

作者 冴月

109

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★★★ Excellent!!!

あやかしと人。
で始まる四行詩で、背中を走るものを感じた。
この人の物語は、絶対に面白い。
なんて読みやすい文章を書くのだろう。
なんて、詩的で抒情的な物語を紡ぐのだろう。
暮らしたことのない島、行ったことのない島の風景が目の前に広がる。

昔、ネコを飼っていた。いや、ネコに飼われていた(笑)
小学校の頃に拾ったネコが、いつの間にか家族の中心になり、
15年近く生きて、そして死んだ。
なんど、猫又になっていいから、長生きしてほしいと願ったろう。
あの頃の切ない思い出がよみがえる、そんな物語でした。

ありがとうございます。

★★★ Excellent!!!

夢のような光景を、永遠に覚えてる。
見えなくても、たしかに繋がってる。
美しくも哀しさを感じさせる文章が、誰もが通り過ぎて行ってしまう子ども時代の切なさや焦燥や不安を、より一層際立たせていると感じました。
最後は、見えなくなったことを嘆くのではなく、懐かしさをいとおしむような、じんわりと心があたたかくなる終わり方でした。
多くの人たちが、忘れゆく季節。
でも猫叉と出会えた主人公は、彼女のおかげで、いつでもその季節に帰っていけるのでしょう。

★★★ Excellent!!!

一つ歳をとったとき、一つ何かを知ったとき、私達は成長して、何かを落としてしまう。そんなモノを優しく丁寧に思い出させてくれる作品でした。

穏やかな空気を柔らかな文章が綴られて、きっとこの一人と一匹はこんなふうに儚くて美しい時間を過ごしてきたんだろうな、だんだん仲良くなっていったんだろうなとお話の外まで想像させてくれました。それもあって、ラストシーンが胸に響いて仕方なかったです。
物語として短編でこんなにも綺麗にまとまるものなのかと絶句しました。全部が綺麗。

持っていたはずの大切な物。握っていたはずなのにいつの間にか手放してしまっていること、手放さずにはいられないこと。大人になるということを酷く美しく透明に書かれていて、読者を揺する力が強い。いろんな歳の人にいろいろな受け取り方で読んでほしい作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

島に残る猫又の伝承。
なぜか彼女が見えるようになってしまった、わたしの過ごした十五の夏。
かつては見えた人が居て、いつか見えなくなる人と居る。
五百年を永らえてなお、生来の猫のように気ままな彼女。
例え忘れたとして過ごした時間は消えないと言う彼女の事を、どうして忘れる事ができるだろうか。
きっと今でも。あの伝承は続いている。

★★★ Excellent!!!

500年という月日。
その2割も生き得ぬ我々には、その果て無さを想い起こす事さえ一筋縄では行きません。

先日もそんな話をしましたが、人の心というのは何れにせよ、その生涯の中で移ろい変わり往くものです。

大人になってしまった我々は誰もがそれを自覚する時が有り、故に若気の至りに想いを馳せる日もあるのでしょう。

だからこそ噛み締める、化け物にまで成り、同じ事を400年。繰り返す彼の猫又の悲しき事よ。

青春の中の面妖な出会いと別れの物語。追憶と、幾許かの寂寞を込めて。

★★★ Excellent!!!

この島にはひとつの言い伝えがある。
それはそれは美しい姿をした猫又がいて、数十年に一度、ひとりのこどものもとに姿を現し、しばらく側に寄り添って暮らしてから、ふっといなくなってしまうのだという。一晩だけ咲き誇る玻璃の華をひとつ、残して……
…………
……

猫はふしぎないきものです。
もふもふしていて、ちょっとばかりきまぐれだったりあまえてきたり、とってもかわいいのに、時々ひどく透きとおったまなざしをして、なにもないはずのところを眺めていたり。
だからか、むかしから猫には人の理解がおよばないちからがあると考えられ、《鍋島騒動》やら《猫南瓜》やら……あるいは《猫の踊り場》や京都の《称念寺》通称猫寺などたくさんの話が残されています。
こちらの小説も読めば読むほどに、どこかの島には実際にこんな言い伝えが残っているのではないかと思わせられます。それは猫といういきものから漂うふしぎなふんいきもあるでしょうが、作者である冴月さまの確かな筆致によるものです。
最後は涙腺が熱くなりました。
猫が忘れないように、ひともまた、忘れずに言い伝えていくのですね。

子どもの頃の夢を思いださせてくれる、素晴らしい小説です。
猫がお好きな御方にもそうでもない御方にも、是非とも読んでいただきたい物語でございます。

★★★ Excellent!!!

子供の頃抱いてた幻想・・・例えるならぬいぐるみとお話し出来ると思ったり、森には妖精がいて友達になれると思ったり
そういう記憶って、最終的に現実が追い越していって忘れられちゃうのが殆んどですが
このお話しは化け猫が現実と幻想のはざまから大人になる主人公を肯定し、そばにいてくれるから、大人になっても幻想を忘れることなく、主人公はラストシーンに到達できる。
化け猫はいないかもだけど、ふとした時、読者のあなたもきっと子供の頃の幻想を思い出せるのではないかと優しく声をかけてくれる作品でした。
執筆、お疲れ様でした!素晴らしかったです

★★★ Excellent!!!


十五歳とは、人生においてきわめて大きな転換期でありましょう。

子供が大人へと向かう過渡期の、その直前。

いわば純粋な子供の最後段階でありますから、精神も変化し始めるさなか、大きく揺れ動く時期であります。

『わたし』が白い化け猫に出会ってしまったのは、そんな時でありました。

人の言葉を解す不思議な化け猫と過ごすうち、『わたし』はある先生の秘密に気づき――

これより先は、ぜひあなたの目でお確かめください。

いまもきっと、いつかどこかで脈々と受け継がれているあやかし奇譚がここに有ります。

★★★ Excellent!!!

青春という特別な時間を、“あやかし”という不思議要素を入れることで、より特別にしている感じがしました。
“あやかし”が青春の具現化となっている、という捉え方もできるなと読んでて思いました。

別になんてことない青春の時間を鮮やかに描き切っていて、無性に懐かしくなって、恋しくなります。全く自分の青春とは似てないんですけど、どこか似ている気がします。そんな描写力があります。

途中で先生が出てきて、『ん?』って個人的になったんですけど、(多分普通の人は引っかからない)、最後に回収されるので納得ができました。あの先生が出てきた描写は無駄ではなかった。その回収の仕方で、一気にこの作品が好きになりました。魅力はそこにあると思います。静かに繋がれていく感じが好きです。

良かったです。

★★★ Excellent!!!

15歳
中学生から高校生へとなる
一歩大人に近づく、そんなある日に
主人公は伝説の妖怪、猫又に出会う

大人になる、環境が変わる瞬間
何かとの別れが伴う

大人になるとは
どういうことなんだろう

何かを忘れること?
何かを捨てること?

そうなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない

そういったことを
幻想的な世界観の中で味あわせてくれる作品

★★★ Excellent!!!

猫又の伝承が残る島で育った「わたし」が出会ったのは、大きな獅子ほどもある白い猫。
血も凍らせるような妖気と、身も心も緩むような陽気じみた芳香を纏う、歪な怪異──

ややホラーチックな導入ですが、この猫又の可愛いらしいことと言ったら!
とにかく前編を開き、最初のシーンを読んでみてください。猫又の可愛さに心を掴まれ、作品世界に没入すること間違いなしです。

主人公と猫又のほのぼのとしたやりとりやコミカルなシーンが、後編の切なくも美しい情景をいっそう引き立てているように思います。

誰もが通り過ぎていく子供時代の終わり、確かにあった成長痛に似た感情を、鮮やかに蘇らせてくれる作品です。
タグのとおり万人向けですが、特に猫好きの方は是非ご一読ください。

★★★ Excellent!!!

その島には美しい化け物、猫又がいる。
数ヶ月間という短い間だけど一緒に過ごしたその存在は、今も島に脈々と受け継がれていて……。

五百年前の猫の想いが生きていて、限られた年齢の期間だけ見える存在。
別れの際には美しい玻璃色の桜の花を咲かせると言う。
思春期の年齢の心に刹那的な想いを残すこの不思議な猫又は何かを要求したりするわけでもなく、ただ傍にいてくれる。

島を出る主人公はこの存在と別れるけれど。
30年して戻ってきたこの場所にはやはりあの猫又がいて、一緒に過ごす自分とは異なる人間がいて。

「ちょっとだけ、昔話に付き合ってくれるかい?」

そう生徒に思わず声をかけ。
昔話に思いを巡らせる姿が脳裏に浮かぶようでした。
素敵な物語をありがとうございました!

★★★ Excellent!!!

15才という人生の中の一瞬の束の間、一緒に過ごすことができる猫又。
猫又と子供時代が重なり、手放さなくてはいけない切なさに胸が締め付けられる思いでした。
ずっと掴んではいられないからこそ、美しさ愛しさは増すんですね。
繰り返される出会いが、主人公の過ぎ去った過去の思い出をより優しいものにしていました。
大人になったもう目には見えないかつての子供達の心の中に猫又はずっと住み続けてるんですね。
猫又の居場所が沢山できてるみたいで嬉しかったです。
素敵な物語をありがとうございました。