二ヶ月でなんちゃって架空言語作ってみた。
中原恵一
はじめに 〜突貫工事開始〜
以前こちらに掲載した記事が高く評価されて、私としてはかなり意外だった。自分自身の創作メモとして書いただけだったので、こんなにたくさんの人に読まれるとは思っていなかった。
あれからしばらく経って、こんな企画をやったら面白いんじゃないかというアイディアが思い浮かんだ。
ズバリ、実際にどうやったらそれらしい架空言語を手軽に作ることができるか、或いはあたかもその世界に言語が存在するように見せかけることができるか、ということである。
というわけで、なんでもいいからなんちゃって架空言語を作ってみようと思う。
この言語を作るにあたってまず大前提になったのは、ヨーロッパのような世界で使われている言語を作るということだった。
日本の文壇で多くみられる創作世界では、基本的にヨーロッパのような架空の国が舞台になることが多い。
架空の世界を作る時、ほとんどの場合――たとえ非ヨーロッパ的な架空世界であったとしても――具体的などこかの国をモデルにすることは多い。全く架空の国を想像する場合でも、古代マヤのような、とか、古代中国のような、というように、意図せずとも結局どこかの国に似てしまうのはありがちなことだ。ファンタジーやSFというのは、そもそもの性質として現実世界の風刺だったり模倣だったりするわけで、○○のような世界が創りたいというのを出発点にして作る以上、現実世界のどこかの国に似るのは当然といえば当然である。
そこで筆者は、とりあえず一番広く親しまれているヨーロッパを選んだ。
そして、そうした架空のヨーロッパの国で使われている言語や文化は、無論ヨーロッパの言語のような言語であるべきだ。
ここで二つの方向性が考えられる。
一つは現実の言語をそのまま使ってしまうことである。
そもそも、例えばドイツのような国が舞台なのであれば、ドイツ語をそのまま使ってしまったところでさほど違和感はないように思う。(むしろそこで英語を使った方が違和感があるような。例えばラジオやニュースといった日本語でも普通に使うような普通名詞で英語を使う分には何も問題ないと思うが、近未来SFでもないのに英語で固有名詞をボンボン命名して『彼は竜騎士(ドラゴン・ライダー)の異名を持ち、帝国国立学院(エンパイア・インスティテュート)でも名を馳せた』とか文中で書いてしまった――もしアメリカやイギリスのような架空国家が舞台であればともかく――として、読者はこの国の人たち何語喋ってるんだ? とか時代はいつなんだ? とか思ってしまうわけだ)
まあラテン語なりギリシャ語なりから借用して使えば、時代考証も省ける。こうした手法は、おそらく以前から使われてきただろう。
そして、私がここで提示したいもう一つの方向性は、どのヨーロッパの言語でもない架空のヨーロッパ語を新たに作ってしまい、固有名詞のネーミングを決めるというやり方だ。
ヨーロッパの言語というのは歴史的にお互いに影響し合ってきたこともあり、発音や語彙、文法において他のヨーロッパの言語と大筋で共有する特徴を持っている。ヨーロッパに存在するほとんどの言語はフィンランド語やハンガリー語、バスク語など一部の言語を除いて「インド・ヨーロッパ語族」と呼ばれ、一つの大きな家族なのだ。
こうしたたくさんの言語に共通する特徴を洗い出し、逆にそれらを組み合わせてそれっぽい似非ヨーロッパ言語を作ってしまうことは実は容易である。言語学の発祥の地はヨーロッパであり、ヨーロッパの言語ほど研究し尽くされた言語もまた珍しいからだ。
まあ簡単に言うと、下記の方法を使えばフランス語のようなロシア語のようなドイツ語のようなスペイン語のようなイタリア語のような、結局どれでもない言語ができあがるという寸法である。
そんなこんなで、似非ヨーロッパ語(Pseudo-European)略してPE計画がスタートした。
※この言語を作る目的は、「日本のファンタジー小説によく登場するヨーロッパっぽい架空の国で使われている既存の言語とは違うヨーロッパっぽい言語を作って、本来架空であるはずのその国がドイツやフランスなど実在する国っぽくならないようにする」ということである。実にくだらない。
しかしくだらないことも全力を注いでやれば面白いのだ。
本稿ではこの架空言語を仮にPEと呼び、PEはインド・ヨーロッパ語族にある架空の語派であるとする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます