第10章
翌日のこと。月曜日だったけど私は、卓也を桜公園に呼び出した。「伝えたいことがあるから」って言ったから、卓也に期待させてしまったかも知れない。私は、卓也が若干緊張した表情で私に向かい合った瞬間にあっさりと告げた。
「卓也とは付き合えない、ごめんね」
無表情で、淡々と。我ながら凄く冷たいと思う。でも昨日と桜井のことから、私が悲しそうにしたら余計に悲しませると思ったから。
「え、、、っ、と、じゃあ桜井と付き合うのか??」
卓也も桜井も、なんで私がどちらかとは付き合うみたいに思うんだろう?
「ううん。どっちとも付き合わない」
卓也は相当ショックだったみたいだ。表情が凍りついた。
「、、、俺のこと、嫌いなのか??」
「嫌いじゃない、でも恋愛感情で好きでは無いかなって思った」
複雑だよね。めんどくさいよね。ごめん、私だって卓也と付き合えたらいいなって、好きになれたらいいなって思うよ。
「そっか、、、」
卓也に分かってもらえるように精一杯の気持ちを込めて言う。
「ごめんね。卓也はカッコいいし付き合えたら凄い楽しくなるとは思うんだけど無理だった」
すると、卓也は私に向かってきっぱりとした口調で言った。
「なら、俺と付き合ってみてよ」
「?」
「付き合ってから好きになることもあるかも知れないだろ??これからお前を彼女として扱うから、それであと1ヶ月やらせて」
卓也は私を熱のこもった目で見た。
「え、、、っとそれって、付き合ってみてそれから好きになれば良いって思ってくれるってこと?」
私にとってそれは意外だった。好きじゃないと付き合っちゃいけないと思っていて、それが私を縛っていたから。
「もちろん。チャンスが増えるんだから喜んで」
私の心が動いた。
「真衣、好きだ。俺のこと絶対に好きにさせてみせるから、付き合って」
「、、、うん、分かった」
私は、卓也と付き合ってみることにした。卓也の言葉に少し楽になったから。卓也は嬉しそうにはにかんだ笑顔を見せた。
「ふふ、じゃあ明日から放課後うちに来て勉強教えてよ」
卓也ってば、早速デート?でも。こういうのも、なんだか良いかも。それに、こういう強引なやり方、嫌いじゃない。私は微笑んだ。
「いいよ」
それから、私たちは平日は卓也の家で、土日はどこか遊びに行ったり、勉強したりした。ある日はショッピングモールデート、またある日は図書館で勉強。卓也は優しくて、私になにかを強制したりはしない。手を繋ぐとかはするけど、ある日してきたように抱きついてくることはなかった。それを寂しい、って思う私もいたり。でもこの距離感を心地よく思う私もいたり、、、この気持ちはよく分からなくて、だからこそ私は自分の気持ちを気にしないで卓也といられる時間が好きだった。
私の気持ちはどうあれ、1ヶ月は私たちは「付き合って」いるのだから。
楽しい時間は経つのが早い。のこり1週間になったとき、私は1ヶ月という期限を意識しなければいけなくなった。だって、1ヶ月が終わった後正式に付き合うのか、やっぱり別れるのか。それを決めることになるから。あと何日、と毎日思いながら過ごした一週間。とうとうあと2日となった時。卓也は、
「明日で終わりだな、、、明日は遊園地に行こう」
遊園地は、付き合ってからまだ1回も行っていなかった。桜井とも行った遊園地。そこで私は、どう思うのだろう。桜井との違いが嫌でも分かる遊園地は、最後に自分の気持ちを確かめるのに最適だと思った。
「うん」
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