第5章

その日の放課後。私は朝ママに言われたように卓也の家で昼ごはんを食べさせてもらった。

「おかわりしていいんだからね!」

優しく言ってくれる卓也ママに、私はニコッとしながら頷いた。卓也ママは、おっとりしていて癒し系だ。うちのママとは大違い。卓也は私の隣でたくさんおかわりしながらガツガツと食べていた。

「「ごちそうさまでした」」

私たちは声を揃えて言った。卓也ママの

「はーい」

という声を聞きながら手を洗い、私はこれからどうしようかなと考えた。宿題は出てない。いつもなら宿題できるんだけど、、、

「今日は宿題出た?」

卓也ママは言った。お昼ご飯を食べさせてもらうのも何百回目だし、読めるのだろう。

「出てません、、、」

卓也も頷いた。

「じゃあ、久し振りに卓也の部屋で遊んだら?私これから夜ご飯の買い物行きたいし。卓也、真衣ちゃんに変なことしないでね」

「は?!しねえよ!変なこと言ってないでさっさと行けよー!」

卓也は顔をぼっと赤く染めて反論した。卓也ママはふふっと微笑んで買い物に行った。

「ね、だいぶ久し振りだよね?卓也の部屋にお邪魔するのって」

「ああ。あれから漫画も増えたし、教科書も増えたし、より狭くなった」

卓也は部屋は案外綺麗だ。そんなこと言っているけど、綺麗に仕舞っているに決まってる。

ガチャ

卓也が部屋に招いてくれる。

「うわぁっ、でも変わってないね!」

「そうかな?暇だしオセロとかするか??」

「うん!」

私と卓也はオセロをすることにした。大抵こういう時は私が白で卓也が黒だ。

私は集中して戦略を考え、無言でパチッパチッと打っていく。卓也も同じだ。いつからが、負けた方が勝った方の言うことを聞くことになっていて、真剣勝負だからだ。

結果は、、、

「あーーー。負けた、、、」

私の負け。卓也は嬉しそうにニヤニヤしている。

「ふ、俺の勝ち!なんでも言うこと聞くんだよな!なににしよっかなぁー?」

大抵おやつを一個多くするとか、そんな感じだ。私は卓也を黙って見つめた。卓也はしばらく考え込んでいたけど、やっとまとまったみたいだ。卓也が出した答えは、、、?

「真衣、こっち座って」

卓也が指差したのは、ベッド。なんだろ?おやつじゃないみたい、、、私は素直に腰かけた。

「そのままにしてろよ」

そう言って卓也は私の方によってきた。ベッドに登って、、、、

「えっ、、、」

卓也は、私を挟むようにして足を伸ばし、後ろから抱きついてきた。驚いて声を上げる。

「ふふ、こうしてるとなんとなくあったかくて安心できる」

卓也、、、?珍しい。手をつなぐこともなくなってきたのに抱きつくとか。初めてかも知れない。私は自分が真っ赤なのを自覚した。卓也が後ろにいるって言うのが温度で分かって、安心する一方で落ち着かない。

「っ、ドキドキするんだけど、、、?」

私は抗議する気持ちを込めて言った。でも、

「俺も。すごくドキドキする」

卓也はさらにきつく抱きしめてきた。息が耳にかかってくすぐったい。なんか変な感じ。ずっとこうしてたいって思う。

まぁ、ずっとしていられる訳もなくちょっとすると卓也は私を優しく解放した。

それから私たちの話題は卓也の漫画のことに移り、卓也ママが帰ってくるまでそれは続いた。

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