第9章
運命の日曜になった。
『真衣の家に11時に迎えに行く』
そうメッセージが送られて来た。私は、これから桜井に言わなければいけないことを想像して悲しくなった。桜井や卓也の気持ちはとても嬉しい。小学校時代、1回も告白されることも無かった私としては自分に僅かな自信を持てる出来事にもなった。でも、好きとか付き合うとか言うことは想像出来なくて、、そういうのを考えた結果。
私の中で気持ちは決まったんだ。もう、ここから結果が変わることは無い。
ピーンポーン
「桜井!」
「行こっか」
桜井は、さりげなく手を繋いできた。繋いだ手が熱くなるのを感じる。やっぱり、桜井に私はドキドキしているみたいだ。
「遊園地に行くのは初めてだね」
「そうだね、真衣は絶叫系大丈夫だったよね。いっぱい乗ろうか」
桜井は、告白してきたあの日から私のことを名前呼びするようになった。
「うん!」
遊園地までは電車に乗って2時間ほど。席が空いたので2人並んで座り、話しながら過ごした時間はとても短く感じた。
「着いたーっ」
「ふふ、じゃあ初めは何乗る??」
「んー、初めはシューティングゲームが良いなー!」
「じゃあそうしようか。」
桜井はとても優しい。私は少し申し訳なくなった。
「桜井は、何に乗りたいの?」
「俺は、真衣と乗れればなんでも良いかな」
ドキッ。
桜井の何気ない一言で、私は思わずときめいた。桜井はふふ、っと笑っている。これは絶対確信犯だ。
「そ、そっか、、、!じゃあ乗ろう」
私達は色んなアトラクションに乗った。私が最後にきちんと言わなければいけないことを忘れるためにどんどん乗りたかったこともあるけど、桜井も楽しそうにしてくれたから良しとしよう。時間はどんどん過ぎていく。そして、日が暮れてそろそろ帰らなければいけなくなった。
「帰る??」
恐る恐る言う私に、桜井はあっさり頷いた。
「そうだね、返事は桜公園で聞かせてもらっていいかな?」
桜公園って言うのは、うちの近所にある中くらいの公園のこと。私は覚悟を決めて、、頷いた。
あと2時間、1時間、30分、20分、10分、5分、0分、、、
桜公園に着いてしまい、私は怖くなってしまった。そんな私の気持ちを露知らず、桜井はスタスタと入っていき、ベンチに腰掛けた。隣をポンポンと叩いている。私は素直に隣に座った。
沈黙を破ったのは桜井だった。
「あのさ、ムリしなくていいから。素直な気持ちを教えて」
私は頷き、いやいや口を開いた。
「あの、、、」
でも、そこからが出てこない。どうしても桜井の気持ちを考えると、言えなかった。
「あの、、、っ」
言おう言おうとするけれど、やっぱり言えなくて黙ってしまう。見かねた桜井が言った。
「やっぱりダメ?」
私はコクリ、と頷いた。桜井の気持ちは嬉しかった。桜井と一緒にいた時間は楽しかったよ。でも、、、。ごめんね。
桜井は、少し悲しそうな顔をした。
「そうか。だよなぁ、、、卓也と付き合うんだろ??」
私は驚いた。その通りだったから、、、ではなく、間違っていたから。
「ううん、付き合わないよ」
桜井は衝撃を受けたみたいで、目を見開いて固まっている。
「え、、、じゃあだれと付き合うんだよ」
「だれとも付き合わないよ。今のところ」
そう。私が出した答えは、両方断ること。やっぱり二人ともすきだけど、好きでは無かったから。この複雑な思い、わかってくれる人はいるかな?
「、、、これからも友達でいてくれるか?」
不安そうに聞く桜井。
「当たり前でしょ?大切な友達だよ」
桜井は俯いて震えている。私はそこから目をそらした。
「今日はありがとう。すっごく楽しかったよ。また遊ぼうね、、、じゃあ」
私は今日はこれ以上桜井と同じ空間にいることができなかった。私が付き合えば、桜井が悲しむことは無い。でも桜井を好きになることは無いだろうってわかってるから。ときめきは淡いもので、好きから来るものじゃない、ような気がするから。
「、、、」
桜井の返事を待たずに私は立ち去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます