第4章

「あのこと」が起こったのは一学期の最後の方の放課後だった。

その日私は、卓也のとこで夜ご飯を食べさせてもらうことになっていたのに卓也の姿がなかったので探し回っていた。 でも見当たらなくて、最後にここにはいないよなと思いつつ普段人通りのない理科室前の廊下に行ったんだ。すると人の声が聞こえてきて。一人はすごく怒った声で叫んでるみたいだった。私は思わず立ち止まった、、その声が、すごく聞き覚えのある声だったから。卓也の声。

それから階段に腰掛けて会話を聞いた。いけないことだと思っていても、、、気になってしょうがなかった。しばらく聞いていると、もう一人は桜井だった。でもまだ、卓也がひたすら怒鳴っているだけでなんで怒っているのかが分からなかった。そのまま聞いていると、、、

「お前、真衣のこと好きなのか?」

って言う卓也の声が聞こえたんだ。

え?は?私??なんで、、、?

私は疑問でいっぱいで、本当なら聞いてはいけないって分かっていてもしっかり聞こうとする自分がいて。しばしの沈黙のあと、

「好き、、、って言ったら怒るのか?」

桜井の声。それはどういうことなんだろう?好きってこと?好きじゃないってこと??

「怒りはしないけど、真衣がお前のこと嫌うようにしてやるよ」

ん?え?卓也はなにを思ってそんなことを言ってるの?

「は?それは違うだろ?高野が決めることだ。ま、お前はないだろうけどな」

どうやら私のことで揉めているらしい二人。喧嘩はやめてほしいけど、どうすれば良いかがわからない。

「は?なんでだよ!!」

いつも優しい卓也がすごく怒ってる。私が聞いたことない声。

「これまで散々アタックする時間あったのに、モノにできてないからだよ!」

もうなんの話かわからない。

「お前だったらモノにできんのかよ!!」

「あぁ、俺がお前の立場だったら今頃確実に付き合ってるな」

あー、卓也は私が他の人と仲良くして寂しいの?心配なの??で、桜井は、、、??もしかして私のこと、、?

「は、絶対無理だな」

「お前は無理だろうが、俺ならありえなくない」

私は俯いて目をぎゅっとつぶった。もう、どうしていいかわからなかった。聞こえる卓也と桜井の怒声。バレたらやばい。怖くて、ひたすらに時の過ぎるのを待っていた、、、

しばらくして、怒鳴り声が聞こえなくなった。私が顔を上げると、ドタドタと足音を立てて卓也が私の目の前を通った。ビクッとしたけど、私には気づいていないみたいだった。私は安心して俯いた。

「高野、、?」

「え?」

そのまま俯いていると、いきなり頭上から声が聞こえた。顔を上げると、なんとも言えない表情の桜井。

「さっきまでの、聞いてたのか?」

私は、どうやって答えようか少し悩んだ後言った。

「えっと、全部は聞いてないよ」

少しは聞いてたって言ってるようなもん。

「そっか、、高野は、中井のこと好きか?」

私は即答した。

「すきだよ」

本心だ。ついでに言えば、大翔も由紀もすき。私の大切な親友だから。当たり前、という顔をした私にちょっと困った顔をして桜井は言った。

「恋愛感情はあるか、って意味だけど」

私はびっくりした。恋愛感情、、、。これまでだれかをちょっといいなとか思うことはあったけど、それが小説にあるような恋かと言われると違う気がする。私は恋をしたことがないんだ。私は首を傾げた。

「そういうのは、、、よくわかんない」

桜井は驚いて、そして、なにかを考えたみたいだ。なにを考えたかはわからない。桜井は

「俺が恋ってものを教えてやるよ」

っていきなり言った。私は混乱した。それって、私が桜井を好きになるようにするってことだよね?告白、、、??その時の私は、きっと微妙な顔だったのだと思う。桜井は私の耳元で

「好きだよ」

って言って去っていった。私は混乱しか無かった。告白にどう答えればいいのか分からなくて、これからどうすればいいのかも分からなくて、、、私には、それからどうしたかの記憶があんまりない。

でも確実なのは、「好き」とても甘く危険な雰囲気を纏わせて桜井が私の耳元で囁いた言葉に、凄くときめいていたこと。もしかしたら私は、桜井が好きなのかも知れない。

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