分類できない作品に、物語の喜びが確かに宿る。

まず謝らなければならない。
自分が書くものに短編が多いことが作用してか、私は長い文章を読むことを敬遠する癖がある。
この作品のずらーっと並んだ目次を見た時も、正直最後まで読み切れる自信はなく、CASE1だけ読んで感想を書ければ上出来かな、くらいに思っていた。
ここまで書けばお分かりだと思うが、私は読まされたのだ。
CASE1どころか、続くCASE2、さらにまだ完結していないCASE3の既巻分、その最後の一文字まで。

この作品は「分類できない作品」である。
見る角度によって、純粋な文芸にも、ライトノベルにも、あるいは何かの漫画やアニメの原作のようにも、姿を変える。
この作者には、それら全てが重なり合う、針の穴のようなほんの小さな隙間に筆を落とす確かな目と、それを生き生きと描き切る筆力がある。

何言ってんだ、と思うだろう。
私も本作を読む前にこんなレビューを目にしても、きっと信じなかった。
とにかく読んでみて欲しい。
読めば分かる、としかいいようがないのだ。

最後に、作中の言葉を引用する。
「写真はボクらの意図や思惑を超えることができるんだよ。ボクはその瞬間が何よりも好きなんだ」
この作品は写真そのものだ。
読者の意図や思惑を遥かに超える、そんな物語の喜びが確かにあることを、私は約束する。

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