それでも僕は、写真家を真摯な職業だと敬服する。
- ★★★ Excellent!!!
まだ連載中だが、完結まで書ききってほしいのでその一助になればと思いレビューを書いた。
カメラというのは魔性だ。カメラに魂を抜き取られると言われた時代があったが、現実から時間という概念を捨て、ただ一瞬を切り取るという行為に意味を見出した先人たちは偉大だ。何にせよ、思い出を保存して置けるのだから。
この作品がシリアスな展開でありながら、それでもスラスラと読めてしまうのは、作者のユーモアが僕たちが物語に没入する手助けをしてくれているからだろう。まるで漫才を見ているようだ。
ギャグを挟みながら小気味よく、時に人間の確信に触れる物語のリードは、今の僕には真似できない。口惜しいことに僕も創作を嗜んでいるのだが、こればっかりは実際に読んでもらわないと空気感が伝わらないだろう。特にテロリスティック。
また、家族の根深い問題に切り込みながらも、解決できることと出来ないことを分けて、最後まで依頼者の願いを叶えようとするササキのプロ意識には敬服する。
そして彼の言った、写真家ほど無責任な職業はない。写真を切り取るのは、一瞬。そして、どんな写真ができるかは撮ってからでないとわからない。
確かに、無責任とも取れる。しかし僕は、写真家ほど真摯な職業はないと思う。何故なら、不確実であるという結果を知っていたとしても、あえて依頼主が求めているであろう最高の一瞬を切り撮ろうとするからだ。
誰でもスマホで写真が取れる時代。女子高生でも画質だけならプロのカメラマンにも劣らないかもしれない。そんな時代で、カメラマンの役割とは一体何なのだろう。僕にはまだ答えが出せていない。
それは、もしかしたら、この作品が完結したときには分かるのかもしれない。