写真家アシスタントが見る、写真家という職業の存在意義

あなたは写真を撮ったことがあるだろうか?

この問いに対し、あると首肯する方が大多数だろう。
スマートフォンにタブレット端末。撮る手段は数あるし、それらは必需品と言っていいほどに社会生活の中へ入りこんでいる。
高額な機器機材を用いずとも、いつでもどこでも誰もが写真を撮れる時代。それが現代日本だ。

そんな「写真を撮ることが特別ではない」時代において、写真を生業とする写真家に何ができるのか。また、写真家を求める人はどういった存在なのか。
この作品はそれを軽妙に、しかし現実の一場面であるかのようなリアリティでもって描き出す。

存命中の家族の遺影を撮影せよという奇妙な依頼。心霊写真を撮ってくれという悪戯めいた依頼。一見首をかしげてしまうような物語の底には、登場人物たちの確かな過去と、違和を全く感じさせない緻密な動線が息づく。
何気ない小さな行動が、後になって重要なファクターとなっていく妙。実は有名なドラマの脚本だと言われれば、やはりそうかと納得してしまうほどの完成度である。

軽妙さも絶妙だ。
漫才のような会話劇や主人公のみせる切れ味鋭い突っ込み。思わず吹き出し復唱したくなるセリフや地の文は、読む者の心を掴んで離さない。


等々、長々と語ってしまったが、要はこの一言に集約される。

この作品は面白い。

もしあなたが「写真家ほど無責任な職業はないよ」というフレーズや作品タイトルに僅かでも興味惹かれたならば、是非とも手に取ってもらいたい作品だ。

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