小さな歪みを放っておくと

ありふれている夫婦の何気ない日常が妻の視点から始まり、その生活が穏やかに描き出されていく本作。

しかし作品を包む暖かな空気は、主人公の友人が零したある言葉によりたちまち掻き消える。

“ウサギのオスってね、子供がいると――たりするんだって。”

ランチ中に交わされた他愛ない世間話。
その普通の会話が主人公の、夫婦生活を営む中で沈殿していったものを変質させる。

現実と妄想、愛情とストレス。
複雑な感情の狭間で揺れる主人公は非常に危うく、読む者に言い知れぬ恐怖を抱かせる。

揺らぐ彼女が何を決意するのか。

己を振り返り「最近家族と会話していないな」と思った方には、是非本作品をご一読頂きたい。

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