のぞみのかけら

作者 生津直

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★★★ Excellent!!!

それを知った時、読者はゾクリとするだろう。

ツバメはオスが死んでしまうと、他のオスが雛を殺すらしい。自分の子孫を残すために。
オス猫も子猫を殺すことがある。それもまた自分の血を残すためだ。
動物は自分の子孫を残すこと、本能に忠実だと思う。

人間の場合は。
少子化が問題となっているとはいえ、子供を育てるには莫大なお金と労力がいる。
核家族化が、子供を持つことをますます困難にしていく。
自分だけで手いっぱいの生活や、不仲な両親のもとで育った記憶が、結婚や出産を遠ざけていく。原因はもっとたくさんあるだろう。
現代は、理性による家族計画というよりも、現実的に子供を育てられないのかもしれない。

本能と理性。
人間もまた、本能と理性の間で揺れる生き物だ。
主人公のトラウマ。それの及ぼす多大なる影響。
一見、どこにでもいるような主婦の内面にある、静かな狂気。
それが暴走してしまうのか。あんな時期もあったなと笑い話になるのかは、紙一重だ。

のぞみのかけら。
望みの欠片なのか、それとも……。
じわじわと心を浸食する、日常のなかのサスペンス。是非ともご堪能あれ!

★★★ Excellent!!!

「カニバリズム」と「幼女」の中に、「大統領」がどのようにして登場するのか…と気になり、読んでみました。
何かしそうな雰囲気を醸し出しているのは明らかに夫であり、私自身もいつその奇行が表に出るのかと気になって、早く次をという気持ちが抑えられませんでした。
結末は最高にぞっとしました。カニバリズムと言うと単なる一方通行の行動をイメージしていましたが、相互(意思は別として)的な行動のパターンもありえるのだな、と。単純な一方通行よりぞっとする気がします。
私が1番おもしろいなと感じたのが、この相互の部分。何が相互なの?!と気になった方は、是非読んでみてください!

★★ Very Good!!

二人の間に子供ができると、途端に異世界に飛ばされたかのような感覚に陥る。少なくとも私はそう思います。
今作を読ませて頂いてまず、家庭があるならばこうだろうというワンシーンから始まり、そこから一気に主軸となるキャラの描写で読者に伝えたい感情が脳越しに浸透していきました。
この作品はもしかすれば読者様によって感じ方が多種多様かもしれませんが是非、脳越しに伝わるこの文章を他の方にも知っていただきたい。

最後に、感想がえらく下手で申し訳ございません。レビューの方、失礼しました。

★★★ Excellent!!!

ありふれている夫婦の何気ない日常が妻の視点から始まり、その生活が穏やかに描き出されていく本作。

しかし作品を包む暖かな空気は、主人公の友人が零したある言葉によりたちまち掻き消える。

“ウサギのオスってね、子供がいると――たりするんだって。”

ランチ中に交わされた他愛ない世間話。
その普通の会話が主人公の、夫婦生活を営む中で沈殿していったものを変質させる。

現実と妄想、愛情とストレス。
複雑な感情の狭間で揺れる主人公は非常に危うく、読む者に言い知れぬ恐怖を抱かせる。

揺らぐ彼女が何を決意するのか。

己を振り返り「最近家族と会話していないな」と思った方には、是非本作品をご一読頂きたい。