「カニバリズム」と「幼女」の中に、「大統領」がどのようにして登場するのか…と気になり、読んでみました。
何かしそうな雰囲気を醸し出しているのは明らかに夫であり、私自身もいつその奇行が表に出るのかと気になって、早く次をという気持ちが抑えられませんでした。
結末は最高にぞっとしました。カニバリズムと言うと単なる一方通行の行動をイメージしていましたが、相互(意思は別として)的な行動のパターンもありえるのだな、と。単純な一方通行よりぞっとする気がします。
私が1番おもしろいなと感じたのが、この相互の部分。何が相互なの?!と気になった方は、是非読んでみてください!
ありふれている夫婦の何気ない日常が妻の視点から始まり、その生活が穏やかに描き出されていく本作。
しかし作品を包む暖かな空気は、主人公の友人が零したある言葉によりたちまち掻き消える。
“ウサギのオスってね、子供がいると――たりするんだって。”
ランチ中に交わされた他愛ない世間話。
その普通の会話が主人公の、夫婦生活を営む中で沈殿していったものを変質させる。
現実と妄想、愛情とストレス。
複雑な感情の狭間で揺れる主人公は非常に危うく、読む者に言い知れぬ恐怖を抱かせる。
揺らぐ彼女が何を決意するのか。
己を振り返り「最近家族と会話していないな」と思った方には、是非本作品をご一読頂きたい。