群像劇、旅、未来、奇跡。
作者さまがこの物語を表現するにあたって使われた言葉たち。
ファンタジーって、ふたつあるって思っていました。
書きぶりはいろいろあるものの、重厚な設定なり物語を見せようとするもの。
舞台をファンタジー世界に借りたうえで、キャラたちを自由に遊ばせるもの。
でも、わたしはこのお話、どっちでもないと思いました。
世界を、なぞる……ううん、ちがうなあ。世界の色を、匂いを、その登場人物たちを通じてわたしたちに伝えようとする、その世界の意味を分からせようとされている。
そんな気がして。
花を、手渡されます。
登場人物たちから、作者さまから。
未来に光を呼ぶ花を。
その香りの、その光の、あたたかさ。
さあ、ご一緒に。
異世界ファンタジーと聞けば、冒険や魔法、バトルやダンジョン、チート能力にざまぁにハーレム、さらに〇〇な俺が~とか、〇〇な悪徳令嬢が~とか、〇〇配信が~とかがあり、次いでブラックだったり社畜だったりゲーム知識だったり、まぁ、異世界ファンタジーと言えばこの辺りの「武器」をどう「ネタ」として見せるかが一般的であり、確実な書き方であったりします。
ですが、こちらの物語は全部捨ててます。
で、何を書いているかと言えば「人間ドラマ」です。
ここが大事な所なのですが、現代のドラマでは集まり得ない、「異世界という世界においてなら存在しうる人々」を集め、そのドラマを構築しているのです。
以上の構造から、他所の小説では見られない「この物語だけの強み」をお分かりいただけますか?
さらに言うのならば、その構成の妙たる部分が「人物の書き分け」です。皆様に分かり易くお伝えするのなら、三谷幸喜先生の映画やドラマをご存知でしょうか?
彼のストーリー構成は、複数を越えた多数の個性豊かな配役が現れ、その一つ一つが掘り下げられながら、一つの大きな物語を紡いでゆくものです。
多少語弊があるかもしれませんが、こちらの小説にはそれと同様の仕掛けが施されているのです。
だから、私はタイトルに「賞賛!」という言葉を入れました。
お勧め致します。
映像とは違う文字だけの世界において、個性豊かで特殊な設定の人物達を緻密かつ読み易く、さらに理解しやすい文章で書く、その途方もない才能を垣間見てみませんか?
異世界ファンタジー小説がテンプレ的に持つ武器を潔く捨て、しっかりと別の形でオリジナルの「面白さ」を作り出している作品です。
私は賞賛します。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)
初めてこの話を読んだとき、すごく人間臭い話だなと思った。
ファンタジーと聞くと、魔法やドラゴンみたいなシステム面を想像するが、この話は人間を書いている。
それも、どの登場人物も癖のある過去を持つキャラばかり。その上で書いているのは、人としての営みであり、等身大の願いなのだ。
普通に生きられない人間が、普通に生きて、死ぬ。
自由に生きられない人間が、自由に生きて、死ぬ。
そして、大切な人の隣で生きていたい。というささやかな願い。
そんな願いを叶える為、彼らは伝説の花“シンフェリア”を咲かせる旅に出る。
全編を通して感じるのは、人との出会いや、繋がりを大切にしているところだと思う。
数奇な運命で若女将ナハスの宿屋アルブールにやってきた彼らは、女将の先見(予知)により、それぞれが花を咲かせるために必要なピースとして一蓮托生の旅に出る。
そして、旅の中でそれぞれの思いがぶつかり、繋がりを深めながら目的の地へ向かう。
愛と恋、希望と絶望。各々の思いが絡み合いながら編まれていく言葉の詩篇は、確かに彼らの人生を紡いでいる。
果たして、彼らはシンフェリアを咲かせることは出来るのか。
彼らの願いは、未来はどうなっていくのか。
最後まで仕組まれた人智を超える運命と、小さな人の願いを是非、ご一読ください。
世界のどこかに咲く、なんでも願いをかなえてくれるという花、シンフェリア。
この物語は、切実なる願いの元、そのシンフェリアを求め彷徨った人々が辿る旅路とその終着点の様子を描いたものになります。
とある事情から記憶を失った青年ロェイと、彼を保護した少女フラッフィー。
ロェイの背景と事情を知る青年ラッシェル。
何やら事情がありそうな男サントワと、彼に連れられた少女オルガ。
そしてずば抜けた美しさを誇る美女エリス。
そんな彼らは導かれるようにして、宿屋「アルブール」に集います。
彼らの願いとは。それぞれが抱えた悲しみや事情とは。
そこに描かれていたのは、大切な人と離れたくないという切実な思いでした。
それらの全てを包括するのは、何者の敷いてきた道なのか。
旅路は海の果てへと向かいます。
ハッピーエンド確約の、波乱万丈冒険譚。
どうぞお見逃しなく。