優しい夫がいて、祖父母も両親も健在で、愛くるしい猫と暮らす美冬。幸せの中に少しの不満や心細さも混在する、そんな普通の日常を送る彼女は、雪が積もったある日の夜、不思議な体験をします。
美冬の人生と日常が繊細に描かれているからこそ雪の夜の出来事の異質さが際立ち、その後の展開の切なさが胸を打ちます。
登場する人や動物も魅力に満ちています。理解ある夫、不憫な幼馴染、少しだけ登場するおばあちゃんの醸し出すなんとも言えない寂寥感、妙に元気な犬……。
特筆すべきは、猫。ちょっとした仕草がとにかく可愛い。特に何をするでもないのに絶大な存在感を放っており、そのくせ物語の邪魔にはならず、雰囲気作りを大いに助けています。猫好きな方にもお勧めできる作品です。
ぜひご一読を。