第3話 現実の泡

 今朝、夢を見た。

 泡に全身が包まれている、不思議な感覚な夢だった。それは体を洗う泡でも、洗剤で食器を洗うときに出るものでも、しゃぼん玉でもなく。例えるのならば、炭酸水をグラスに注いだときに出来るような不確かなもので、からだをほんの少しでも動かしたら、一瞬でそれらが消えてしまいそうな気がして、息をひそめて、動かないように必死だったが、鼻先が酷くかゆくなってしまって、思わず指の腹で鼻をこすった瞬間、目覚めた。


 昨夜、私は3年半付き合った彼氏に振られた。理由は単純なもののような気もしたし、絡まってしまった毛糸のように複雑にも考えられた。

 -変化のない今の恋愛がつまらないし、君じゃないといけないと思えなくなってしまった。

 そう言われたことに対して、酷く冷静な言動や態度を取ってしまったことを今更ながら後悔していたが、しかしながら、彼の気持ちを取り戻したいとか、あの場で号泣して別れたくないと言うような年齢はとっくに過ぎているのだから、受け止めるしか術はないのだと、これで良かったのだと、言い訳を頭のなかで考える。

 

 何が不正解で、何が正解なのか知ることもなく、今という現実が泡になって消えていくようだ。それに対し、高まる感情の波は止まることを知らずに、私の心を揺さぶり続けている。

 

 今朝、夢を見た。それは、私が彼の前でいい女を演じていたことを示すような夢だった。

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