【恋の掌編集】小さじ1杯の魔法

高月うみ

第1話 都会の夜空

 -さっきから、ため息ばかりだな。

 そう考えながらも足は止まることなく歩き続ける。何度か空を見上げても、都会の夜空は想像以上に明るく、星ひとつも照らしてくれない足元は、田舎育ちの僕の心を気弱にさせてしまう。こんな夜は特に。彼女と喧嘩するのは、これで何度目だろうか。今夜、こうしてため息を吐いた回数も数えきれない程だ。

 解っているんだ。僕らは喧嘩しても別れることなんてしないこと。それは僕だけの思い違いではなく、お互いを必要としているのは紛れもない事実で、今回の喧嘩だって、始まりは些細なことだったのに。どうして、こんなに大きなものになってしまったのだろう。彼女にきつく物事を言い過ぎたことに対する反省と、後悔で僕は家を出てきたけれど、彼女が家で待っててくれていることも、きちんと知っている。

 そして、こういう時は決まって、田舎の満天の星空を思い浮かべる。星座の名前はひとつも分からないけれど、どこを見ても瞬く星が見えるあの夜空が無性に恋しくなるんだ。


 僕は彼女と出逢ってから、もう5年以上の月日が流れ、その間に一緒に大笑いしたり、一緒に泣いたり、この様な喧嘩も多々あった。それでも、一緒にいるってことはそれなりの理由もあるし、そこには愛があると思うんだ。結局、彼女のことばかりを考えている自分がいることに気がついた。そうだ。今度の休みに、僕の田舎の夜空を見に行こうかと訊いてみよう。

 さて、そろそろ彼女に-帰るよ。と電話をかけようか。

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