きっとそれは太陽のような…

 景色が浮かんでくるような優しい文体の物語なのです。

 題材にされているのは、中華を思わせる華やかな宮廷の人間関係なのですが、私の目に浮かぶ景色は何故か青空が入る構図が多くて、いつも太陽があるように気がしてしまいました。

 主人公は女性ですが、月のようなたおやかな、星のような輝いているというような印象はありませんでした。

 太陽です。

 とても激しい印象があります。

 しかし思うのです。月や星は、夜空にあって目立つから特別、綺麗に思えるけれど、太陽は青空にあって直視できず、「美しい」という形容詞とは無縁のような気がする、と。

 空にあって当たり前、冬には暖を取れる程、暖かくしてくれる訳ではなく、夏には寧ろ迷惑に感じるような存在…とまでいってしまえば、悪口の類いになってしまうのですが、そんな印象が悪口にならないストーリーだと感じました。

 題材にしているのは、様々な野望、思惑のある宮廷事情と政略結婚、

 平和のためでした。

 その平和という状態に、私はこの太陽と同じような印象を受けてしまうのです。当たり前にある、迷惑な時もある、十分な役に立たない時もある。

 直視できない時もある、と。

 あらゆる理屈が飛び交い、自らの考えが正しいと補強していく人たちがいる宮廷で、主人公サイドでは理屈ではなく感情で進みます。

 その感情の動きが、とても好ましいのです。○○だから、××だから、「私がこう思うのは仕方がない」とか「私が思うのは当然」とか、「思わない人はおかしい」という暴力的な所が全くなく、大団円の最後を飾るのも、人々の歓声でした。

 怒声を上げる事よりも、歓声を上げる事で良い結末を迎えられる…それだからこそ、物語から感じられる景色には、明るい空がいつもある気がしました。

 直視できない時も迷惑な時もあるけれど、当たり前にある事が好ましい物語と主人公の一致、素晴らしい物語です。

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