感情の美しさに気付かされる作品

物寂しげで、けれど美しい月の描写。そこにいるのはヒトでないものだけ。

エコーとウィスパー、どちらもヒトではないからヒトと同じように思考することはできません。なのに彼らはお互いを理解し合っているというのがひしひしと伝わってきます。

そんな彼らが一緒に過ごす中で、ヒトではなかったはずのエコーがゆっくりとヒトに近付いていく。一つ一つ、エコーが自分をヒトたらしめるモノを獲得していく様子がまたいい。ヒトというのはこんなに美しいものだったかと舌を巻く程です。
細かい心境の描写は殆どしていないはずなのに、エコーが感情を一つ理解するたびにすとんと入ってきて思わず溜息が出てしまいます。

SFに興味がない方でも是非読んでみて欲しい一作です。

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