第23話 フラウ〜女

そもそも女とは何なのかについて考えていた。


言葉がとっ散らかっていたらすまないのだが。




女という生き物がどんな思考をしているのか分からないというのが大抵の男達の思いだろう。



〝ストーカー殺人〟なんてものは大体そういう単純な理由が種となって起きるのかもしれない。


自分(おとこ)の物にならない者、自分に理解出来ない者は殺す。恐ろしいからだ。

古代から続く男の本能的な衝動である。



殺すまではいかないが意地悪をする。怒らせてみる。嫌いなふりをする。


原理は一緒だ。


肉体的には惹かれるが中身が理解出来ない。だから嫌いだが惹かれる。



俺にとって真弓子は正にそういう存在だった。

『すとーかー』なのは真弓子の方だという話だが。



まず、何でニートの俺なんぞに執着するのかも分からなかった。


「目の色がきれい」という理由で付いてくるというのは分かっていたが、この俺の左目が彼女にとってどんな風に見えているのかが分からない。



よく言われるのが「女はミステリアスな男に惹かれる」という説だ。



真弓子にとって俺の目はそのミステリアスとやらの象徴なのだろうか、と思い当たっていた。


もし俺が青い目を持っていなかったら、あんな顔も学歴も申し分ないハイスペックな女とは幼馴染という理由を抜かせば街中ですれ違うだけの関係だった事だろう。



真弓子はギャーギャーうるさいがそれ以外は隙が無い。

ギャーギャーうるさいのも本当の自分を隠す為のカモフラージュなんじゃないかと穿ってしまう。



真弓子はまるで『のっぺらぼう』のように掴み所がない。

俺の事は(兄のような存在として?)本気で慕ってくれているようではあるが所謂チョロインとも違う気がしていた。



マゾヒストの男なら黙って真弓子を崇拝するのだろうが残念ながら俺にはその気は無い。




いきなりで何だが、俺はソシャゲの他に本を読むのも案外好きである。

古典名作、哲学、SF、ミステリー、エッセイ、本の紹介本と読み漁っていた。



皆さんお馴染みの太宰治なんかも当時の後書きまで含めて大体読んだ。



脱線すると、太宰治は小説も面白いが書いた本人はもっと興味深いという事が分かった。



俺が言うのも何だけども、本当に恥の多い人生を送って恥かいたまま死んだよなあと思う。作品は素晴らしいんだが。


いや、本人と作品を一緒にするのは良くないのは分かる。



しかしまず女と何回も心中しようとするのが凄い。


心中を受け入れた女は、『小説家』という肩書きを持つ太宰にさっき言った『ミステリアス』なものを見出して熱狂してしまったのだろうか。



しかし、太宰と深い関係にありながらも心中を避けた女がいたと記憶している。奥さんの事ではない。

不倫していた女で、である。



その彼女は何故死を免れたのか。

太宰の元を去ったのか。


俺の勝手な推論だが、彼女は『ミステリアス』な仮面を被った太宰の本質を見抜いて彼に愛想をつかしてしまったのではないだろうか。



太宰が、単なる極度の小心者である事に気付いて。



本質を見抜いても愛せるのが本当の愛なのではないかと恋愛経験の無い俺なりに思うが、女というのは飽きっぽい。と、色んな本を読んで伺える。



『ミステリアス』でなくなった小心者など用済みなのだ。そういう薄情で、ある意味賢い女であったのではなかろうか。



太宰は心中を遂げた女の事を『すたこらさっちゃん』と呼んでいたらしいというが、本当にすたこらと逃げたのはこの女の方である。

太宰はこの女の事を小説に出したらしいが実際の所どう思っていただろうか。



脱線し過ぎて悪い。



何が言いたいかと言うと、俺も真弓子に『ただ目が青いだけのやつ』と思われたら去られてしまうのだろうか、という事だった。



それはそれでいい、と思っていた。何故なら俺は太宰先生じゃないからな。




でも、アヤコばあちゃん言う所の『真弓子の自己犠牲の精神』って何だろうと俺は考えていた。




「おーい、マサルや! 晩御飯が出来たぞ、降りてくるんじゃ」



階下からアヤコばあちゃんのいつもの声が聞こえた。



アヤコばあちゃんは謎は多いが性格が分かりやすくていい。巫女として戦っていただけあって男らしいんじゃないかと思う。



梅子はダ女神だが女神だけあって無償の愛情を持っていた。

でないと酷い目に遭う事を半ば知りつつも麻里亜子を助けたりしない。


男まさりというか傲慢な性格だが女らしい所もあるなあ。

これも『自己犠牲』の精神だ。




で、その梅子だが、居間に降りるとまたもや柱に括り付けられていた。



「儂の育てたミニトマトを勝手に食べた罰じゃ」



アヤコばあちゃんは本気で怒っているようだった。

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