ファンタジーでありながらも、このリアリズムは心を深くえぐる・・・

 読み進めるにつれて、どこまでも、どこまでも、人間のウソ、社会のウソ、読者のウソを、深い闇に覆いながら、暴いて、心を深くえぐっていきます。
 ファンタジーなのに、過剰なまでのリアリティー、逃亡を許さぬ作者の視線、まるで、読者全員を打ちのめしてゆくかのような・・・。この悪夢が、これからどのように変貌するのか、このまま徹底的な悪夢として人を打ちのめし続けるのか、私には見当もつきません。ここはある意味で牢獄であり、檻の扉が開いているのに、私は逃げ出して自由になる道を選べませんでした。最後まで読むでしょう。
 ページ数まで打たれていますが、この物語は、一度は何らかの形で、書籍化されたものなのでしょうか?
 読みきるには、かなりの覚悟が必要かと思われますが、それでも、読書という旅の中で、一種の通過儀礼、ある意味で洗礼、を受け容れるならば、ここには途轍もない質量の、宝物が、眠っています。私は、ここからも希望は生まれる、闇の中からも光は生まれうると、言いたいです。
 児童文学としては、この残酷な世界を体験するのに、子供たちがどこまで耐えうるのか、気になります。しかし、これは真に希少な、傑作ファンタジーではないかと、まだ途中ではありますが、感想を抱いております。私は速読な方ですが、何度も何度も読書の途中で立ち止まり、自らを省みなければ、なりませんでした。
 ここまで読むのに、2日半かかりました。
 場合により、このレヴューも書き直すことがあるかもしれません。それほどまでに、現の悪魔は、私を虜にしたのです。
 軽い仕掛けのホラーなどより、はるかに恐ろしい。
 思い切って、避けられないリスクを受け容れて、この物語の中に、飛び込んでみる勇気を、出してみてはいかがでしょう? きっと、あなたは現実にファンタジーの登場人物となって、ご自分が求めているものを、見つけることができると思いますよ。          世吉より

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