真実と虚構のはざま、知性とあまりにも儚く切ない思い

 とても美しくすばらしい自然と、禁忌とされているわけではありませんが、そのような世界に足を踏み入れてしまった者の、ある瞬間が、延々と描かれています。ここに書かれていない戦いや、おそらくは現代においては病とみなされそういうところにお世話にならなければ仕方がなかったり、作者さんは均衡や正義をとても大切になさっているようですが、ま印にまで手を出していらっしゃる。私はま印については無知ですので、コメントができませんが、自然の法にのっとったものであることを祈ります。私は雪の匂いくらいは判りますが、この方は雪の音まで聞こえるようです。またご自分の世界に酔っていらっしゃるわけでもないみたいですし、とても知的な方です。
 闇からも光は生まれ、光のなかにも闇はあります。白い闇も私も経験したことがあります。レヴューのタイトルに、虚構、という文字を使いましたが、ときに虚構と思っていたものが、真実である場合さえ、あるのかもしれません。
 「あなた」がだれで、どのような方なのか、作者さんはおそらく明かしたりはできないでしょう。突き詰めたところを、語れない、そんな事情もあるのかもしれません。
 しかし私はここまで一気に拝読させていただきましたが、この人は悪い方ではありません。ただとても頼りない路を、歩んでいらっしゃる。
 宮沢賢治の、「くらかけやまの雪」という一編の詩を、読んで心に刻んでほしいと、切に願います。
 おそらくこの人は、月を見てきた目をしていらっしゃいます・・・