★★★ Excellent!!! 列車の向かう、その先に。 夷也荊 がたん、ごとん。列車はひたすら進む。その中に、少年が一人で座っていた。そんな少年に、白いコートの男が声をかける。トンネルに差し掛かった時だった。 少年と白いコートの男は、互いに名乗り、ひと時の間、語らう。少年も男も不思議な雰囲気を持っていたが、この列車自体が不思議だった。 列車に乗ったからには、目的があるはずだった。しかし、男はその当初の目的を失ってしまう。列車を降りる際、男は少年に自分の白いコートをかけてやった。 何故なら少年の正体は――。 そして男の当初の目的、そして列車に乗っていた人々の目的は――。 どこかノスタルジックな雰囲気の作品で、大きな事件などは起こらないものの、文章自体に魅力を感じる作品でした。 是非、御一読下さい。 レビューいいね! 2 2021年3月2日 06:33
★★★ Excellent!!! 扉の向こうの世界には、あなたの人生が広がっている 遊井そわ香 目的地のない、透明で不思議な列車の旅。 少年は男性と出会い、会話をし、別れる。 列車の旅は、人生の一ページと似ています。多くの人が一期一会を繰り返しながら、自分でもはっきりしない終着地へと向かって生きている。 少年は思います。 「その扉の向こう側にはどんな景色が広がっているのか、教えて欲しい……」 あなたならどう答えますか? 同じ景色でも、何を見て何を感じるかは一人一人違う。それは人生の感じ方とも共通している気がします。 「あなたの人生は何を見て、何を感じましたか?」 そう問われているようです。 この読後感は私のもの。この作品から何を感じるかは人それぞれでしょうね。 読み取り方が無限に広がっている、味わい深い作品です。 レビューいいね! 3 2020年12月11日 01:44
★★★ Excellent!!! 旅の目的とは・・・ 羽音 彰麿 とある、誰もが向かわざるを得ない目的地への旅の途上が、ワンシーンで、ある乗り物の中で、描かれています。 登場人物も可能な限り少なくしてあり、その旅の途中では、たとえどのような者であるとしても、温かな言の葉、やさしさを表現することだって、できるのです。 ある扉を開けたとき、そこにどのような世界が待っているのかは、解りません。 それでも、いつかこの人たちは扉を開けるかもしれません。 でも、そうしないのかもしれません。この乗り物が、停まり、そこから降りる場合だって、あるかもしれないからです。私はそうして欲しいし、降りてから視る世界を、新しい世界を、体験してほしいからです。 世界を回すのは、お金ではありません。世界を回すのは、愛です。 この乗り物が停まった場所から、愛を求めて、この人たちは行くべきだし、そうなるのだと思います。 と、勝手ですが、そう言った感想を、抱きました。 レビューいいね! 1 2020年3月12日 03:46