論理武装不要の正統派

 まず惹かれたのは、復讐を主題とした物語の多くが理屈、理論を解き、主人公の復讐を「当然のこと」あるいは「仕方のないこと」にしてしまいがちな中、本作はそういった論理武装が排除された物語である事でした。

 家族の情、絆をそんなものは知らんとばかりに突っ走る主役、突っ走らせる仇役、それだけでなく登場人物の多くがある種、自分勝手に生きています。

 その生き方が、これでもかと生の感情を発露させており、これにはどんな理屈、理論を並べても女々しい言い訳にならざるを得ないと感じさせられます。

 さりとて難しい、また暗い話の連続かといえばそうではなく、所々、明るい、または馬鹿馬鹿しいと感じる日常があり、それが登場人物が浮き世離れした存在ではない、現実に生きていると感じさせるアクセントでした。

 他の誰かが書けるはずもない、作者ならではと思わされる復讐譚、新しい形のダークファンタジーと思いました。

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