それぞれの正義

気がつけば、見知らぬ場所に放り出されていたエルバ。
自分の知っている世界ではない場所で、追剥にあい全てを失う。
記憶の中にある白い人。
持っている白い剣。
彼に託されたこととは、一体なんなのか。
彼は何を選択し、何を学び、そしてどう生きるかを選ぶのか。

知らないことわからないことだらけの世界に放り出され、持っているものを全て奪われてしまったら、人は人を疑わずにはいられないだろう。
それでも、誰かと出会い共に旅をする中で、根底では信じる心を捨てられずにいる。
それが人というものかもしれない。

この物語には、現実の世界と重なる部分が多々ある。
作者は、今あるこの世界の現状をこの物語に重ねたのではないか。
正義とは人それぞれの中にあり、相容れるのは難しいことだ。
それでも生きていかなければならないし、その上で平和を願わずにはいられない。
不条理な現実を突きつけられたエルバ同様、私も悔しくてならない。

最後の、フューレンプレアの「花を見に行ってきます。」
がとても素敵でした。彼女の、ふわふわっと微笑むような雰囲気を想像できました。
トップに立たなければいけないことで毅然としてきた彼女の言葉だからこそ、ジーンと来るものがあります。

しっかりとした世界観があり、文章も淀みなく読み進められます。
是非、ご一読を。

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