月
相方は今日も絵筆を握り、カンヴァスと向かい合っていた。
霧の無い空を夢に見るという変わり者は、俺の知らない景色を描き出す。限りなく黒に近い紺色の空、空の色を映して揺れる水面。そして、
「なあ、これ何だ?」
空の真ん中に、白銀に輝く真円。内側には不思議な模様が見て取れた。
相方は筆を止め、紫水晶の目を向けて。
「さあ? 見えたとおりに描いてるだけだから」
それはそうか。相方が夢に見るのは霧の向こう、誰も知らない空。そこに浮かぶ円盤の名前なんて、お互いに知るはずもない。
唯一、俺に言えることがあるとすれば。
「綺麗だ」
俺の言葉を受けて、相方は、少しだけ口の端を歪ませた。
「お前にそう言ってもらえるなら、本望だ」
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