甘味と航海
「今日は、海も穏やかですし、甲板でお茶でもいかがでしょう?」
船長がそう誘う時には既に支度が済んでいるのだと、コルネリアは認めざるを得なかった。
霧深い甲板にはテーブルが一つ。二人分の椅子と茶器に、皿いっぱいのクラッカー。そして、ベリーや柑橘のジャムの瓶。
「準備がいいのね」
「お客様に旅を楽しんでいただくのが、船長の役目ゆえ」
「よく言うわ」
幽霊船の船長は、漂流者を歓待しながら逃がさない。亡者一人に生者が一人、歪な旅の目的地は今もなお深い霧に隠されたまま。
「どうぞ、フロイライン」
促されるままに、クラッカーにマーマレードを載せて、口に運ぶ。その甘みと苦みは、二人きりの航海の日々によく似ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます