10

「今のところ、スティル第一王子が次期国王の座に相応しいという声が貴族の間で上がってます。時々突飛な行動をとるお方ですが、それ以上にとても優れています。頭もよく、社交的。剣の才能もお持ちだとか」

 あれが?あの嵐のようにやって来て帰った男が?そんなまさか。だって、私がしなければ自己紹介すらしそうになかったのよ。


「ティスト第二王子はあまり人前に出るのが得意ではないようです。王になんて興味ないと叫んで今はご自分のお部屋から出てこないのだとか。反抗期でしょうか」

「そこまで情報は……」


 それって外に出してはいけない情報じゃないの?第二王子が引きこもり、民が知ったら大騒ぎしそうな内容だし。でも、それなら確かに王位の争いは起きなさそう。


「今はお部屋から出てこられていないそうですが、知識に関してはスティル第一王子にも勝ると言われています。六つの言語を操るのだとか」

「それはまた……スティル王子とはまた違ったタイプの方なのね」

「ハンメル姫は目立ったことは特に何もしていないそうです。お若いのもありますが、かなりお転婆な性格をしていらっしゃるそうなので」

「まぁ……でもそろそろ婚約なさる時期でしょう?」

「国王と王妃様を毎日見ていらっしゃるので、運命的な恋に落ちて婚約をしたいと仰っているようです」


 まさかハンメル姫も?現在の国王様と王妃様は大恋愛の末に結ばれたと有名だけれども、そんなに凄いのかしら。でも、そんな二人を見ているのだとすれば政略結婚も嫌になって当然かもね。


 ……これからの国を作り上げていく王族の人間がこんなのって国は大丈夫なのかしら。


「あー! いつのまにかこんな時間ですよ! 城へ持っていく荷物をおひるはまとめないといけないですよ! 今日はこれで終わりにしましょう!」

 さっきまでの堅い雰囲気を和らげ、メリアは満面の笑みを顔に浮かべてそう言った。パン!と、開いていた本を閉じると慌ただしく勉強に使った本をまとめていく。

 言語もドゥーレス語からエントレード語に戻った。

 

 王国ではドゥーレス語が主に使われている。エントレード語は神を信仰する信者が多いレーメン領で主に使われているが、レーメン領は小さい田舎にある領だ。私はそこで小さい頃育ったから使えるけれど、絶対に王国では伝わらない。普段使っているのもエントレード語だから、ドゥーレス語はほぼ使わない。ある程度は使えるけれど、王都に行くまでにちゃんとおぼえなきゃ。


「残った本は次回までに読み切れば良いかしら?」

「はいー! 次回は貴族どーしの関係性と婚約について学びましょー!」



 その言葉にこくりと頷くと同時に強張った肩の力が抜ける。出来れば、次回なんて永遠にこないでほしい。


(学ぶのは楽しいけれど……やっぱりマトモなメリアと話すのは疲れちゃうわ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

殿下は運命じゃないので恋しません! 真中 @tmt23315

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ