殿下は運命じゃないので恋しません!
真中
プロローグ
始まりの話
人間には運命がある。
神が創られた最初の人間……女性のレニと男性のルイはとても仲がよく、その二人はお互いを深く愛し、認め、引き剥がされること苦痛とし、生きていた。自分を創った神よりもお互いのことを信頼し、依存する。そうあるべきなのだとされていた。そう神が望んで創ったから。
レニとルイの子供たちも皆そうだった。
いつからか。そうではなくなったのは。
運命がなくなったのは神の気まぐれか。
邪神の仕業か。
自然の摂理でそうなってしまったのか。
二人が離れることを望んだのか。
単なる事故か。
はたまた、それ以外の"何か"が原因なのか。
今更考えても分からない。誰も真実を知ることは出来ない。
だが、絆は強く強く残っている。
しかし、神は人間を確かめるもの。人間に試練を与えるもの。
善き行いをしなければその"運命"は消えてしまうだろう。運命を見つけたいのなら、神を信じて人のためになる行いをしなさい。
世界は、元は、そうだったのだから。
神はそう望んでいる。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
『まーま? わたしのうんめいはだーれ?』
暖かく、柔らかい太陽の光が入る窓際。一人用の小さな椅子に母が座り、その膝の上に幼い私が座っていた。母の白い雪のような長い髪が、太陽の光に反射してキラキラ光る。私を見て、柔らかく微笑む母はまるでお伽噺に出てくる女神様のようだった。
『そうね、神様はねちょっとだけ我が儘なの。でも、とても優しい。あなたが神様を信じてさえいれば、運命はあなたを迎えに来てくれるわ』
『んー? そうなの? でも、いまはうんめいをみつけるひといないよ? なんで?』
『皆、忘れちゃってるのよ。もう片方への繋がってる糸を探す暇がないの。悲しいけれど、それも運命なのよ』
幼いときの私は、母の言ってることがよく分からなかった。その頃は種族同士の争いや国同士の争いで皆が疲れて大変そうで。沢山人が死んで、魔族も妖精も精霊もエルフも沢山沢山消えていった。そのせいで忘れているのだと母は言いたかったのかもしれない。
幼いときの私はただ無知で。小さな小さな少女だった。
『ままはぱぱとうんめいだったの? なかよし?』
母は、幼い私の頭を撫でる。青い、澄んだ空色のような瞳を細めて幸せそうに母は笑った。母が笑っている、それだけで私は幸せだった。父は居なかったけれど、父の分まで母が私に愛情を注いでくれた。それに、屋敷の人も優しかったから気にしていなかった。
『パパがママを選んでくれたのよ。私の運命は君だから。ずっとそばに居てってね』
『そうなんだぁ! ぱぱかっこいー! はやく、わたしもぱぱにあいたい!』
『そうね。二人でパパが帰ってくるまでお留守番しましょう。良い子にしてたらパパが褒めてくれるわよ』
父には絶対に会えないのに。父に会えると信じて私は母と一緒に大きな屋敷で待っていた。
あの頃の私は、幸せしか知らなかったから。
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