「あまり長居は出来ないんだ」と王子が言って客室から出たのがつい先程の話。今は王子の横を歩きながら私は質問に答えている。


「なんで君は本当の話をそんなに深く知っている?」

「まぁ、お母様は所謂狂信者というものでして。教会よりも神のお話を信じると言って他国まで行くぐらいなんです」

「それはなかなか……ということは君も?」

「私は神様が私たち人間を見守ってくださるとは思っていません。それに、神様なんて現実味がないですし」


 そう、神様なんて人間とあまり変わりない。人間くさい欲望を常に持っている。そこに、人間が望むものは何もない。


(あれ、そういえば殿下は私のことお前呼びじゃなかったかな)

 あっちの方が親しみがあって良かったのだけれども、王子とは呼び方までしっかりしないといけないのか。ついでに、私の嘘をホイホイ信じてしまうのも王子だからやめといた方が良いんだけど。まぁ、信じた方が私は嬉しい。嘘は一つもついていないしね。


 その他にも簡単な質問に答えていると、あっという間に屋敷の外の門までついてしまった。ここを私が出ると、報告が後々面倒になるから門の外まで行けない。

「お見送り出来るのはここまでです。ここの場所は他言しないように、あと二度と来ないで下さい」

「なかなか君は手厳しいな。普通の女性ならまた来てくださいね、くらい言うものなのだが」

「私は普通ではないので。あと運命探しもやめた方が良いですよ。今時、下に降りてる神の子なんていませんから」

「……まぁ、もう少し探しておく。今やめると国王からさらに叱られそうだ」

「俺らもとばっちりが来るんで」

「お前は黙っとけ!」


 騎士と喋りながら王子は門の外へ行く。今度は来れないようにもっと厳重な目眩ましの結界を張ってもらおう。


「じゃあなレリアル嬢。またいつか」

 緑色の綺麗な瞳を細め微笑んだ王子はそう言って馬に乗り、騎士を連れて帰っていった。



「……嫌な予感がするわ」

 それから二ヶ月後、その嫌な予感は見事に当たることになる。


 私の元へ第一王子から城への招待状が届いたのだ。


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