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「苦しい苦しい苦しい! そんなに締め上げたら胃が口から出るでしょ! どんなに頑張っても私は細くならないわ!」
「そんなこと言われましても。貴族のお嬢様もいらっしゃるのですからレリアル様だけがコルセット無しというのは許されませんわ。少しでも美しく魅せないと」
「私は貴族じゃないもの!」
「口調。しっかり直してください」
注意しながら、リスティアナは容赦なく私のお腹をコルセットで縛り上げる。久々の苦しさと痛みに我慢しようとしても声が出てしまうのだ。仕方ない、そう思わないとやってけない。
「レリアルさまー、私たちのことはお世話係ではなく城ではじじょ? と呼んでくださいねー! 距離が近すぎると怒られちゃうので」
「わか、分かったからリスティアナを止め……あっ、痛い痛い!」
こんな目にあうのならダイエットでもしておけばよかった。痛いし、上手く息が吸えない。これを常につけている貴族のお嬢様は嫌にならないのかしら。
「レリアルさまー、紺色のドレスと紅色のドレスどちらにします? レリアルさまの髪は珍しいはくはつですし、それを生かしたドレスにしたいですよねー」
コルセットを着たら次はドレスの試着。ドレスの色を決めたあとは装飾係のエルフに持っていくことになっているらしい。なんでそんなに大掛かりなのかは分からないけれど、準備する為の時間はかなり限られているため急いで決めないといけない。
ポンポンと次から次へと出てくるドレスを試着する。コルセットをつけたままの作業だからちょっと、いやかなり苦しい。
「やはり、明るい柔らかい色で攻めますか? ほら、王子の瞳って黄緑というか薄い緑色の瞳でしょう? 少し、いやかなりお転婆なレリアル様ならお似合いになると思うのですが」
「それ貶してます? 殿下の瞳の色のドレスなんて着たら面倒なことになるわ!」
「そうですかー? 私的にはそのお転婆さをカバーするように暗めの色の方がいーとおもいます!」
「貴女は完全に馬鹿にしてるわよね!?」
私の言葉を無視するように、リスティアナとメリアはドレスを出しては戻し出しては戻しを繰り返して話し込んでいる。
「最近の流行りは?」
「濃い桃色のドレスが流行ってますねー! その色を使ったドレスにしますか?」
「いいえ、それだと他の人間と同じよ。格の違いを見せないと。なら黒と紫色のグラデーションはどうかしら。胸付近には銀色の糸で刺繍を散りばめるようにしましょう。テーマは夜空ですね」
「なら、濃い部分は白いストールで少しやわらかくみせましょー! それにも軽く刺繍をします!」
どうやら、二人のなかではもう決まっているらしい。完璧に私の意見は聞かないようにしている。あまり派手なものにして目立ちたくはないのだけれども、如何に他の婚約者候補の女性を蹴散らすかで二人は燃えている。
流行を取り入れないと目立ってしまうのに!そんな色にしたら変わり者だと注目を浴びてしまうわ!そう言いたいけれども、口を出した瞬間、リスティアナからの説教が始まるだろう。美しいものが大好きなリスティアナだから、ドレスは任せたくなかったのに。
コルセットを外していつものワンピースを着る。黒色のシンプルなものだから目が痛くなることもないし、楽だ。
(いつまで続くのかしら、これ……)
二人の話し合ってる姿を見て、私は何度目かのため息をついた。
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