ガールズ・アット・ジ・エッジ

作者 犬怪寅日子

63

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★★★ Excellent!!!

この小説を新幹線の車内で一気に読んだ。
品川から読みはじめて、他の方の短編を読んで(よかった)、タバコを吸いにいって、トイレに入ったりしながら、読んだ。
まもなく目的地到着だ。

移動のスピードと物語のスピードがばっちり噛み合って、それはとても有意義で最高の読書体験だった。

よい小説ってなんだろう?
面白い小説とは?
そんなことを思いながら読んだ気がする。
この作品は「よい」「面白い」。
作者の全身全霊がこめられている。別に全身全霊こめなくても面白い小説はいくらだってあるでしょ、ということをいう人を僕は信用しない。ぜひ読ませていただきたい。でも「面白い」って個人の嗜好かもしれないからなー、だいたいの小説の寸評ってそこでこじれちゃうんだな。

人生とはなんぞや、なんて書くとでかい話っぽいけどシンプルに、
「生きているわたしは世界をどう見ているか」
だ。もっと難しい? いや、小説を書けば、それにちょっとだけ触れることができる。小説を読めば、価値観を揺さぶってくれる。だってみんな微妙に違うはずなんだもん。違うわたしたちが違う人の考えに触れたとき、世界を問い直すんだ。

この人の小説は舐めてない。読者も世界も自分も。あるいはこの人が舐めくさったときは徹底的に真剣に舐めてかかるだろう。
自分を飾らない。飾ることが一番読者に対して不誠実だとよくわかっているんだ。
そういう人でなくては、そういう作品でなくては最後海にたどり着けない。

作家はきっと、美しい海へ読者を運ぶために、小説を書くのだ。

全部が綺麗事にしか見えない、使い古したメガネをかけている者に、新調の機会を与える小説です。

★★★ Excellent!!!



人間が生きるということは自分の人生の主役であり他人の人生の傍観者である。
それは乱暴に切り捨てて仕舞えば自分の見るものが真実であり見えないものは存在しないということでもある。

本作は風俗嬢がボーイを殺し逃走する事件を軸に進む。しかし私たちはなかなか核心に近付けない。風俗嬢、ボーイ、雇われ店長など語り部が変わっていき、それぞれの人生を内側から目の当たりにする、それが事件から私たちを遠ざけるからである。
見える世界が少しずつ変わることでやっと物語の全容が浮き彫りになってくる仕組みだ。
物語の仕組みであり人生の本質だ。主役の目からは傍観者の世界は見えない、逆も然り。それでも私たちは世界を総合的に見たくて相手の立場を考えてみたり、自分自身を他人かのように引きで眺めてみたりする。そんなものだったな、と改めて思い出した。

そして人間として生きる上で重要になる「性」についても本作では真正面から向き合っている。
風俗嬢が多く登場するので必然的に「女性性」に重きが置かれる。かと、思って読んでいたらそんなこともないので、益々続きが気になってしまった。
女性として生きてる上で女の性を商売道具にすることへの必然と不自然さを描き切っていると思う。
例えば、人生からおりたかったリンカちゃんのように、男たちを殺し尽くせばよかったと思うユリアちゃんのように、必然的な流れで彼女たちは風俗嬢になっている。その流れ自体が不自然である。その辺りは私個人の感想なのでご了承ください。

人生における本質を、「役割と性」という二つの観点から描いた謎々的大作である。
読もう!そして感情的になろう!
以上です。

★★★ Excellent!!!

この物語はホワイダニットミステリーであり歪んだラブストーリーであり、壊れた女達の青春群像劇なのだけれど、ここでは物語の全篇に漂う「愛しき疎外感」という視点からついて語りたい。むしろ、もう勝手に語らせてください。好きです。


まず、この作品は誰もが胸の内に秘めた「自分は他人とは違う」という疎外感をあらゆる角度から丁寧に大胆に描いているので、その点を最初に褒め殺したい。すげー。

群像劇であるから、物語の視点は移り変わっていく。
出てくる主人公達は、言ってしまえばイカれたピンサロ嬢たちだ。全体的に頭がおかしい。ヤク中メンヘラどんとこい。

だけど、常人には理解できないような環境で働いてるイカれた彼女たちが、何故こんな人生を送っているのか、何を考えて働いているのか、何に悩み何に生きがいを感じるのか。そして、どうして殺人を犯したのか。
そんなことが次第に明かされていく。
丁寧に描かれていく。すげーぜ。

ここで個人的に注目したいのは登場人物の誰もが持っている「疎外感」だ。
それは家族に対してだったり、他人や仲間に対してだったり、世界に対してだったりするのだが、その「疎外感」を埋めようと悩んだり、葛藤したり、立ち向かったり、諦めちゃったりする、彼女たちの境遇や心理描写が上手いので、こっちも知らず知らずのうちに感情移入しちゃうわけだ。イカれた風俗嬢に感情移入しちゃうんだよっ、初体験!

彼女たちや、時々出てくる彼らたち、には赤い血が流れ、体温があり、今を『生きている』んだってことがビシバシ描かれていて、そんな風に生き生きと各キャラクターを描かれちゃうもんだから、全員が愛しくなってきちゃう。やられたぜ。ちくしょー。

で、物語自体は殺人が起きた時刻を基準に事前、事後を縦横無尽に行き来しつつ、主軸のキャラを入れ替えながら展開していく。
読者は振り落とされないようにしがみつかなければなら… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

とある風俗店でボーイを殺してしまった子を庇う、四人の風俗嬢と彼女たちと共に在るひとりのボーイによる物語です。

あらすじに惹かれて冒頭を読んだ途端に心をガッチリと掴まれ、そのまま一気に最新話まで読んでしまいました。
綾乃、ユリア、ニコ、リンカ。そして真。五人にそれぞれ何が起きているのか、何が起きたのか、何を抱えているのか。はっきりと明言されなくとも、読んでいるうちに「あっ…?」とじわじわ理解させられてしまう文章の巧みさと、その闇の深さに虜になります。
現在ユリア視点の途中まで公開されていますが、彼女の視点一話目を読んだ途端にじわっと涙が浮かんでくるのを止められませんでした…
これは…これはとんでもなく心を揺さぶられます…!

この気持ちをうまく文字にして表現できないのですが、私はこのお話がとても好きです。
是非にたくさんの人に読んで頂きたい!

★★★ Excellent!!!

ジ・エッジは尖っている。たぶん、キンキンに尖っている。あるいは淵。ぎりっぎりの崖っぷちということ。たぶん、そういうことだ。

この小説を言語化するのは難しい。平易なことばで綴られてはいるものの、ぬたっとしていて湿り気に満ちていて、それなのにどうしてかカラッカラに乾いてもいる。そういう何か不安定なものをない交ぜにして、一緒くたに煮込んでしまっている。筆者の類稀なる言語センスによるものだろうか。魅力に満ち溢れている。

レビューするつもりだったのに、取り留めもない文章をここにぶつけてしまっている。冒頭でいきなり事態が進行しているのに読み手は一瞬取り残されたような気持ちにもなる。どうしてだろう、不安感でいっぱいになる。
しかし、〈NO.7 綾乃〉を読み終えると印象がガラッと変わる。湿って渇いたパズルのピースが、パシパシパシッとしかるべきところへとハマってゆくのだ。

結局何が言いたいのか分からない。いや、物語ではなくこのレビューがだ。だが、ひとたび足を踏み入れると分かって頂けるのではないだろうか。何かがぎゅっと詰まって渾然一体となった、この小説のあまりの面白さに。

類稀なる言語センスから導き出されるものは、血と暴力とエロスと――たぶん、精いっぱいの愛だ。ガールズ・アット・ジ・エッジ。これはたぶん、人間が人間であろうとする物語。