ニコの絶望も、綾乃の絶望も、ユリアの絶望も、リンカの絶望も、真の絶望も、
優劣を付けるべきじゃないし、等しく彼女達の心を殺した絶望なんだと思う。
ただそういう風に心を殺した女の子達が、それでも楽しみとか尊い何かを見つけて同じ世界を共有しようとしているのがとても良かったです。
誰にも同情する権利なんてないし、理解されなかったとしても。
彼女達の中で、分かり合えずとも寄り添いあえたなら、それが救いになると良いし、なって欲しい。
読み切った後にはそういう確かな鮮やかさがあってそれがとても尊いものだと思いました。本当に、鮮やかでした。
コミカライズで数話読んでから原作があると知りこちらに流れてきましたが、文章でしか得られない美しさのある物語でした。
詩的でもあり生々しくもある文章表現と、簡潔なテンポ感の良さがバランス良く読みやすく、とても素敵だと思いました。
読めて良かったです。
風俗店で起ったある殺人事件から物語が始まります。
風俗嬢とボーイ一人一人の目線から一つの事件を見つめて語られ、事件の正体が霧が晴れるように段々と輪郭が現れていきます。
その過程に含まれる、彼女ら一人一人の爆発しそうな想い、どうしても抱かざるを得なかった感情、優しさ、哀れみ、その人がその人であって欲しい気持ちなど、一人一人にある切実な思いがひしひしと伝わってきて、登場人物全員がとても愛しかったです。
この世の中のどこかに本当に存在していそうな彼女、彼らの幸せを祈りながら、読んでいました。最終的にあるのは絶望のような気がするのに、なぜか底抜けに明るくも感じ、それがすごく悲しくて、でも最高でした。
最後の最後まで読んでからキャッチコピーを読むと、なんか泣きそうになります。全員幸せになって欲しい。
自分のレビュー文章の表現力では到底説明しきれない、本当に良いお話だなあという思いを抱きながら今この文章を書いております。
本当に素敵な話でした。
人物一人ひとりがしっかり描かれ、また心情•風景とも生々しく鮮烈に表現されていてとにかく読んでいる間登場人物と同じ時間軸を過ごしている気持ちになりました。ネット小説にこんなに引き込まれたことは、今までなかった。
時間軸とメンバーが複雑なこともあり、是非紙でじっくりと読みたいな、という気持ちです。(行きつ戻りつ、確認したくなる展開です。)
登場人物たちの未来が良いものであることを願わずにいられない。作者の方自身もこの人物たちを愛しているからこそ、ここまで繊細な心の描写ができるのではないかと感じました。
今朝一気に読み終えました。良い読書体験をありがとうございます!
ある夏の夜に風俗店で一人のボーイが殺された。容疑者は事件の直後に店から姿を消した風俗嬢4人と1人のボーイ。彼女たちの中で本当にボーイを殺したのか、そしてなぜ他の4人は真犯人をかばって失踪したのか。
本作で重要なのは誰が殺したのか、どうやって殺したのかといった部分ではない。何より注目すべきは事件に至るまでの主人公たちの心理である。
本作は群像劇形式になっておりスポットが当たる登場人物が順番に代わっていく。それぞれ性格が全然違うのに、揃って心に薄暗いものを抱え、しかもそれを隠すのが皆上手い。おかげで互いのことを思っているはずなのに思いは平気ですれ違い、真実はますます混迷の渦へ。
また、バックヤードでの何気ない会話、店に来る嫌な客、空間の匂いや汚れなどの細かい部分など、作品を構成する細かい部分の一つ一つにリアリティーがあり、作者の観察力と描写力の高さを感じられる。おかげでだいぶ生々しい内容になっているのだが、そこにスピード感のある文体が組み合わされることで、読み終わった時にはどこか爽やかささえ感じられるのだからものすごい作品だ。
(「夏の物語」4選/文=柿崎 憲)
人を殺すことが、悪ではないと思った物語は、読んだことがありませんでした。
それぞれに深い闇を抱え、その闇ゆえにこの店にたどり着いた女性たち。
彼女たちは、屈託なく、時に明るく。激しく泣き叫んだり、嘆き悲しんだりなどしないのです。
そんな感情表現は一切ないのに——淡々としているようにも見えるその会話、仕草、行動から、深い傷を受けながら人生を歩く彼女たちそれぞれの痛みが、深く深く抉り出されていく。
そのことに、読み手もまた言葉では表現することのできない強烈な感覚で心を揺さぶられていきます。
何を憎いと思うか。何を幸せだと思うのか。誤りとは、正しいとは。——それは、親から学ぶことでも、教科書や法律から学ぶことでもでもない。
生きることとは、結局は、自分自身の積み重ねた時間の中で経験し、心に刻んだことだけを頼りに、自分自身が探し、気づき、納得をすることの繰り返し——なのかもしれない。
何気なく眺めてきた現実が完全に覆されるような感覚と、目の前に広がる深い闇。その闇の中をぐちゃぐちゃと歩いた末に、濁りのない爽やかで幸せな読後感が胸に残る——そんな、たまらなく印象深い物語です。
この作品のキャッチコピーには、『風俗嬢がボーイを殺して廃校でひと夏を過ごす話』との文字が踊る。
シンプルなキャッチは、見る者の心に引っかかる。
このキャッチにひかれて、ココまでたどり着いた人も多いと思う。
この小説は、キャッチコピー通りの物語だ。
本当にそれだけの物語なのだ。
嘘偽りなく、過不足なく、それだけの物語だ。
それなのになぜ、この物語はこんなにも魅力的なのだろうか。
どうしてこれほどまでに、心をかき乱すのだろうか。
不器用にしか生きられない女性たち……
彼女たちの寂しさが、たまらないほど愛おしい。
現代を生きる人達の多くは、寂しさを抱えている。
社会的な共同意識は薄まり、個として在ることが要求されている。
個として立つことは、ある人にとっては心細く、そして寂しい。
自分で生き方を選び取った時、この種の寂しさがあらわになる。
風俗嬢という生き方を選び取った彼女たちは、その自由と引き換えに寂しさを抱えている。
そしてこの寂しさと向き合うことは、とても困難だ。
彼女たちの夏休みが、永遠に続けばいいのに……
そんな風に思ってしまう。
永遠に続くはずもないのに。
ぜひご自身で、彼女たちの寂しさを追体験してほしい。
そして彼女たちと一緒に、寂しさに向き合ってほしい。
生き方に対する価値観を、見直すキッカケをくれる小説です。
この小説を新幹線の車内で一気に読んだ。
品川から読みはじめて、他の方の短編を読んで(よかった)、タバコを吸いにいって、トイレに入ったりしながら、読んだ。
まもなく目的地到着だ。
移動のスピードと物語のスピードがばっちり噛み合って、それはとても有意義で最高の読書体験だった。
よい小説ってなんだろう?
面白い小説とは?
そんなことを思いながら読んだ気がする。
この作品は「よい」「面白い」。
作者の全身全霊がこめられている。別に全身全霊こめなくても面白い小説はいくらだってあるでしょ、ということをいう人を僕は信用しない。ぜひ読ませていただきたい。でも「面白い」って個人の嗜好かもしれないからなー、だいたいの小説の寸評ってそこでこじれちゃうんだな。
人生とはなんぞや、なんて書くとでかい話っぽいけどシンプルに、
「生きているわたしは世界をどう見ているか」
だ。もっと難しい? いや、小説を書けば、それにちょっとだけ触れることができる。小説を読めば、価値観を揺さぶってくれる。だってみんな微妙に違うはずなんだもん。違うわたしたちが違う人の考えに触れたとき、世界を問い直すんだ。
この人の小説は舐めてない。読者も世界も自分も。あるいはこの人が舐めくさったときは徹底的に真剣に舐めてかかるだろう。
自分を飾らない。飾ることが一番読者に対して不誠実だとよくわかっているんだ。
そういう人でなくては、そういう作品でなくては最後海にたどり着けない。
作家はきっと、美しい海へ読者を運ぶために、小説を書くのだ。
全部が綺麗事にしか見えない、使い古したメガネをかけている者に、新調の機会を与える小説です。
この物語はホワイダニットミステリーであり歪んだラブストーリーであり、壊れた女達の青春群像劇なのだけれど、ここでは物語の全篇に漂う「愛しき疎外感」という視点からついて語りたい。むしろ、もう勝手に語らせてください。好きです。
まず、この作品は誰もが胸の内に秘めた「自分は他人とは違う」という疎外感をあらゆる角度から丁寧に大胆に描いているので、その点を最初に褒め殺したい。すげー。
群像劇であるから、物語の視点は移り変わっていく。
出てくる主人公達は、言ってしまえばイカれたピンサロ嬢たちだ。全体的に頭がおかしい。ヤク中メンヘラどんとこい。
だけど、常人には理解できないような環境で働いてるイカれた彼女たちが、何故こんな人生を送っているのか、何を考えて働いているのか、何に悩み何に生きがいを感じるのか。そして、どうして殺人を犯したのか。
そんなことが次第に明かされていく。
丁寧に描かれていく。すげーぜ。
ここで個人的に注目したいのは登場人物の誰もが持っている「疎外感」だ。
それは家族に対してだったり、他人や仲間に対してだったり、世界に対してだったりするのだが、その「疎外感」を埋めようと悩んだり、葛藤したり、立ち向かったり、諦めちゃったりする、彼女たちの境遇や心理描写が上手いので、こっちも知らず知らずのうちに感情移入しちゃうわけだ。イカれた風俗嬢に感情移入しちゃうんだよっ、初体験!
彼女たちや、時々出てくる彼らたち、には赤い血が流れ、体温があり、今を『生きている』んだってことがビシバシ描かれていて、そんな風に生き生きと各キャラクターを描かれちゃうもんだから、全員が愛しくなってきちゃう。やられたぜ。ちくしょー。
で、物語自体は殺人が起きた時刻を基準に事前、事後を縦横無尽に行き来しつつ、主軸のキャラを入れ替えながら展開していく。
読者は振り落とされないようにしがみつかなければならないので大変だ。文章のジェットコースターだ。
さらに、登場人物たちが繰り広げる無意味に思える会話や、無言のうちにも伝わる共有事項の数々が、読者にとって感情移入したはずの彼女たちに対して「疎外感」を持つ原因になっていく。
そして、事件の顛末についても、読者は蚊帳の外だ。
読者の純粋でありつつ悪どく卑しい興味の対象や、暴露してほしい事件の顛末については、その「疎外感」を持たされたままで、このピンサロ殺人事件は終末に向かって加速していく。走り出したら止まらないっ。
そんな紆余曲折いくつもの章に分かれてる物語なのだが、実は序幕のラストの文章が、この物語の全編に渡っての暗示になっている。
この物語を読んでいる最中にずっと引っかかって頭に残っていたこの文章が、全てを読み終えた後に愛しく思える瞬間が訪れる。
別にネタバレってほどでもないから、書いちゃってもいいかな。
序幕の主人公は自分の働く店で起こった殺人事件を知って、興味を持って首を突っ込み、嫌な気持ちになったり、仲間に対する寂しさや「疎外感」を持つ。
本当に知りたいことはわからないまま、憤りを感じながらも、いつしかそんな感情を忘れて目の前の生活に戻っていく。
「この物語に鳩谷真衣という女はいない。」
……これさ。序幕に登場する主人公はこの物語を読んだ読者の姿そのままじゃない?
この巧妙な仕組み!やったぜ!
彼女たちの密かな「疎外感」。
読者が感じる彼女たちへの「疎外感」。
それが、読後に愛しく思える。
「愛しき疎外感」とはこの読後感なのであるっ!
「疎外感」って感情のタネでもある。
「優越感」にも「孤独感」にも「嫉妬」にも何にでも変化できちゃうモノなのだ。
この物語を読んだ後に残る「疎外感」は
読者それぞれ大切な「何か」になるのだ。
そんな感じでキャラも、物語の構成も花丸なわけだけど、
それよりも最後に声を大して言いたいのは……
なにより!なーにより!
文章がめっちゃいいということだ。
声を大にさせてくれ!ボリュームアップ!!!
例えばさ。同じ景色でも見る者の感情や環境によって見える景色や感じるものが違うじゃない?
それを表現するセンスが素敵すぎるんだ。ハッとさせられるの。感性がすげーの。なんでそんな風に世界を見れるの?
びっくりだよ!!
いっぱいあるんだよ、好きなセンテンツ。
だから、小難しいこと抜きにして、みんな読んで感じてほしい。
個人的には詩とか書いてほしい。
着眼点に脱帽なんよーっ!
いいんだよー、マジで!
てなわけで、みんなで読もう!
ガールズ・アット・ジ・エッジ !
とある風俗店でボーイを殺してしまった子を庇う、四人の風俗嬢と彼女たちと共に在るひとりのボーイによる物語です。
あらすじに惹かれて冒頭を読んだ途端に心をガッチリと掴まれ、そのまま一気に最新話まで読んでしまいました。
綾乃、ユリア、ニコ、リンカ。そして真。五人にそれぞれ何が起きているのか、何が起きたのか、何を抱えているのか。はっきりと明言されなくとも、読んでいるうちに「あっ…?」とじわじわ理解させられてしまう文章の巧みさと、その闇の深さに虜になります。
現在ユリア視点の途中まで公開されていますが、彼女の視点一話目を読んだ途端にじわっと涙が浮かんでくるのを止められませんでした…
これは…これはとんでもなく心を揺さぶられます…!
この気持ちをうまく文字にして表現できないのですが、私はこのお話がとても好きです。
是非にたくさんの人に読んで頂きたい!