人を殺すことが悪ではないと思った物語は、読んだことがありませんでした。

人を殺すことが、悪ではないと思った物語は、読んだことがありませんでした。

それぞれに深い闇を抱え、その闇ゆえにこの店にたどり着いた女性たち。
彼女たちは、屈託なく、時に明るく。激しく泣き叫んだり、嘆き悲しんだりなどしないのです。
そんな感情表現は一切ないのに——淡々としているようにも見えるその会話、仕草、行動から、深い傷を受けながら人生を歩く彼女たちそれぞれの痛みが、深く深く抉り出されていく。
そのことに、読み手もまた言葉では表現することのできない強烈な感覚で心を揺さぶられていきます。

何を憎いと思うか。何を幸せだと思うのか。誤りとは、正しいとは。——それは、親から学ぶことでも、教科書や法律から学ぶことでもでもない。
生きることとは、結局は、自分自身の積み重ねた時間の中で経験し、心に刻んだことだけを頼りに、自分自身が探し、気づき、納得をすることの繰り返し——なのかもしれない。

何気なく眺めてきた現実が完全に覆されるような感覚と、目の前に広がる深い闇。その闇の中をぐちゃぐちゃと歩いた末に、濁りのない爽やかで幸せな読後感が胸に残る——そんな、たまらなく印象深い物語です。

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