ガールズ・アット・ジ・エッジ

作者 犬怪寅日子

愛しき疎外感をあなたにっ!!

  • ★★★ Excellent!!!

この物語はホワイダニットミステリーであり歪んだラブストーリーであり、壊れた女達の青春群像劇なのだけれど、ここでは物語の全篇に漂う「愛しき疎外感」という視点からついて語りたい。むしろ、もう勝手に語らせてください。好きです。


まず、この作品は誰もが胸の内に秘めた「自分は他人とは違う」という疎外感をあらゆる角度から丁寧に大胆に描いているので、その点を最初に褒め殺したい。すげー。

群像劇であるから、物語の視点は移り変わっていく。
出てくる主人公達は、言ってしまえばイカれたピンサロ嬢たちだ。全体的に頭がおかしい。ヤク中メンヘラどんとこい。

だけど、常人には理解できないような環境で働いてるイカれた彼女たちが、何故こんな人生を送っているのか、何を考えて働いているのか、何に悩み何に生きがいを感じるのか。そして、どうして殺人を犯したのか。
そんなことが次第に明かされていく。
丁寧に描かれていく。すげーぜ。

ここで個人的に注目したいのは登場人物の誰もが持っている「疎外感」だ。
それは家族に対してだったり、他人や仲間に対してだったり、世界に対してだったりするのだが、その「疎外感」を埋めようと悩んだり、葛藤したり、立ち向かったり、諦めちゃったりする、彼女たちの境遇や心理描写が上手いので、こっちも知らず知らずのうちに感情移入しちゃうわけだ。イカれた風俗嬢に感情移入しちゃうんだよっ、初体験!

彼女たちや、時々出てくる彼らたち、には赤い血が流れ、体温があり、今を『生きている』んだってことがビシバシ描かれていて、そんな風に生き生きと各キャラクターを描かれちゃうもんだから、全員が愛しくなってきちゃう。やられたぜ。ちくしょー。

で、物語自体は殺人が起きた時刻を基準に事前、事後を縦横無尽に行き来しつつ、主軸のキャラを入れ替えながら展開していく。
読者は振り落とされないようにしがみつかなければならないので大変だ。文章のジェットコースターだ。
さらに、登場人物たちが繰り広げる無意味に思える会話や、無言のうちにも伝わる共有事項の数々が、読者にとって感情移入したはずの彼女たちに対して「疎外感」を持つ原因になっていく。

そして、事件の顛末についても、読者は蚊帳の外だ。
読者の純粋でありつつ悪どく卑しい興味の対象や、暴露してほしい事件の顛末については、その「疎外感」を持たされたままで、このピンサロ殺人事件は終末に向かって加速していく。走り出したら止まらないっ。

そんな紆余曲折いくつもの章に分かれてる物語なのだが、実は序幕のラストの文章が、この物語の全編に渡っての暗示になっている。

この物語を読んでいる最中にずっと引っかかって頭に残っていたこの文章が、全てを読み終えた後に愛しく思える瞬間が訪れる。
別にネタバレってほどでもないから、書いちゃってもいいかな。

序幕の主人公は自分の働く店で起こった殺人事件を知って、興味を持って首を突っ込み、嫌な気持ちになったり、仲間に対する寂しさや「疎外感」を持つ。
本当に知りたいことはわからないまま、憤りを感じながらも、いつしかそんな感情を忘れて目の前の生活に戻っていく。

「この物語に鳩谷真衣という女はいない。」

……これさ。序幕に登場する主人公はこの物語を読んだ読者の姿そのままじゃない?
この巧妙な仕組み!やったぜ!

彼女たちの密かな「疎外感」。
読者が感じる彼女たちへの「疎外感」。
それが、読後に愛しく思える。
「愛しき疎外感」とはこの読後感なのであるっ!

「疎外感」って感情のタネでもある。
「優越感」にも「孤独感」にも「嫉妬」にも何にでも変化できちゃうモノなのだ。
この物語を読んだ後に残る「疎外感」は
読者それぞれ大切な「何か」になるのだ。

そんな感じでキャラも、物語の構成も花丸なわけだけど、
それよりも最後に声を大して言いたいのは……
なにより!なーにより!
文章がめっちゃいいということだ。
声を大にさせてくれ!ボリュームアップ!!!

例えばさ。同じ景色でも見る者の感情や環境によって見える景色や感じるものが違うじゃない?
それを表現するセンスが素敵すぎるんだ。ハッとさせられるの。感性がすげーの。なんでそんな風に世界を見れるの? 
びっくりだよ!!

いっぱいあるんだよ、好きなセンテンツ。
だから、小難しいこと抜きにして、みんな読んで感じてほしい。
個人的には詩とか書いてほしい。
着眼点に脱帽なんよーっ!
いいんだよー、マジで!

てなわけで、みんなで読もう!

ガールズ・アット・ジ・エッジ !

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★★★ Excellent!!!

ジ・エッジは尖っている。たぶん、キンキンに尖っている。あるいは淵。ぎりっぎりの崖っぷちということ。たぶん、そういうことだ。

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